需要創造するアイデアから新市場を紡ぎ出すための行動論理:エフェクチュエーションの活用の実際

Bookmark this on Google Bookmarks

起業家や経営者は、新しい市場の創造に取り組まなければなりません。場合によっては、既存事業を再成長または生き残らせることと同時並行に行う必要もあるでしょう。”Business Development”ができる「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」として2009年からの弊社のエフェクチュエーションの活用の実際の取り組みを振り返ることにいたしました。

因果関係を重視するこれまでの経営理論(コーゼーション)では、新しい市場(全ての可能な市場)はあらかじめ存在し探索的戦略を通じてその市場に参入するか、探索・活用のプロセスに従事する技術的・制度的進化の結果として市場が出現するとしていました。このように新しい市場は予測可能なものであるとするならば、その市場に対する経験知・経営資源など進出する企業の競争優位の状況によって市場占有率が決まってしまうでしょう。中長期的にも新しい市場を開拓し企業成長していくには「競争優位の戦略」が重要視されます。こうしたマネジメント(経営力)にたけている経営者が「プロの経営者」と呼ばれているのでしょう。

一方で、ベンチャー・キャピタルの投資判断は、「経営力」より「創造力」を重視しているようです。プロの経営者は「イノベーター」になりえないのか?・・・・「ほぼ不可能だ。」と言い切るところもあります。投資する企業の最高経営責任者(CEO)には経営の巧拙より、創造力が以前にも増して求められているようです。しかし、会社が大きくなれば経営力も問われてきます。伝統的なベンチャー・キャピタルは出資したベンチャー企業が大きくなると、トップを創業者からプロのCEOに代えてしまうことも多いようです。プロのCEOは創業者が生み出したイノベーションの果実の最大化が得意だからです。エグジット戦略として、事業を最大化して売却すればよいのでしょう。それではここでいう「創造力」は経営者の資質なのでしょうか、それとも論理にまとめられるものでしょうか?

 

ベンチャー・ビジネスを複数回成功させている経営者を研究し、熟達した起業家の論理としてまとめたのが、2009年S.D.サラスバシーの「エフェクチュエーション」です。

新しい市場の創造を達成するための実用的な手段を提供する論理(エフェクチュエーション)では、デザインするように新たらしい市場を紡ぎ出すことができるとしています。(2009年S.D.サラスバシー エフェクツエーション 第5章 エフェクツエーションを理解する:エフェクチュアル・プロセスの動学 P129)

エフェクチュエーションは、許容される失敗による損失リスクの範囲内で、実行可能な手段で市場創造するアイデアを、ステークホルダー(利害関係者)との相互作用によるコミットメント(委託する・責任を伴った約束・関わり合いを持つこと)を連鎖させていき、デザインするように新たらしい市場を紡ぎ出そうとする行動の論理です。

因果関係を重視するこれまでの経営理論では、欧米等ではベイズ推定やCPR(主成分回帰分析)など因果関係を分析する手法も経営に頻繁に活用されており、因果関係の分析結果を基に戦略が策定されています。日本では欧米ほど因果関係を分析する手法は経営の現場で使われていないように思います。

戦略の分野ではもう古典でしょうがM.Eポーター氏の「競争優位の戦略」やJ.L.ヘスケットW.E.サッサーL.A.シュレンシー氏のバリュー・プロフィット・チェーン、マーケティングの分野ではP.コトラー氏の「マーケティング・マネジメント」D.A.アーカー氏の「ブランド・エクイティ戦略」などなど専門書は多数あり、日本でも経営戦略は経営の現場でよく活用されています。マーケティング・戦略ツールとしての古典的な「STPの手法(セグメント⇒ターゲティング⇒ポジショニング)」もあります。ある程度市場が形成された既存事業の競争力強化や再成長には、非常に有用な理論です。経営資源が豊富でマネジメント力に優れた優秀な企業がトップシェアをとってしまいます。市場シェアが大きくない企業・後発企業の経営戦略は、市場をセグメントしてニッチ戦略を展開しニッチ市場で競争優位を作り出せというのがこれまでのセオリーです。また、市場の成熟やグローバル化とともに価格競争が激化し、W.C.キムR.モボルニュ氏らの「ブルー・オーシャン戦略」で言うレッド・オーシャンの市場と化してしまうことも多くあります。

因果関係を重視する経営理論で、有望な新たな市場機会はどの程度見つけ出すことができるのでしょうか?

P.コトラー氏の「マーケティングの10の大罪」で「新たな市場機会を見出せない」とされていましたが、日本マーケティング研究所(JMR)の故水口健次が「初期微動をとらえろ」とよく言っておりましたが、消費者調査からそれを実現する難しさを若かりし頃の私は実感していました。

「新しい市場の創造」の在り方をマーケターから経営コンサルに転職し、神戸の田舎で独立し経営の現場支援でまだ模索し続けていました。流通科学大学学長・日本マーケティング学会会長の石井淳蔵氏の「マーケティングを学ぶ」に、P(ポジショニング)を先行させる新しい市場の創造の事例があります。マーケ屋(マーケティングの外部実務家)としてP(ポジショニング)を先行させるには、ブルー・オーシャン戦略策定のフレームワークを2005年の初版本のころから活用しようとしてきました。「初期微動」は因果関係を証明できるものではありませんが、仮説的に「ブルー・オーシャン戦略」の一部「6つのパス」から「戦略キャンパス」を描いて新しい市場を創造する手掛かりを得るようになりました。

私は、1982年に日本マーケティング研究所(JMR)グループに入り、消費者調査で多変量解析し提案すること(木を見ると呼べばいいのでしょうか)もしましたが、競合企業調査・流通関与者調査などから事業戦略・計画へのご提案(森を見ると呼べばいいのでしょうか)をすることを多く経験いたしました。振り返ると、ブルー・オーシャン戦略の、市場の境界を引き直して競争を迂回し、ブルー・オーシャンを創造するための6種類のアプローチ「6つのパス」、①代替産業に学ぶ、②業界内の他の戦略グループから学ぶ、③別の買い手グループに目を付ける、④補完財や保管サービスを見渡す、⑤機能思考と感性思考を切り替える、⑥将来を見渡す、トレーニングをJMRで実務を通じて経験させていただきました。マーケティング・リサーチと言えば消費者調査&統計分析と思われがちですが、“ブルー・オーシャン戦略の戦略キャンパスを描く”ためのマーケティング・リサーチもあるのです。「ブルー・オーシャン戦略」では「6つのパス」は外部に任せず自分たちですべきだとしています。社内リサーチ部門またはプロジェクトで行うか、「利益相反しない信頼できるパートナー・リサーチ会社」に委託しなければなりません。大手法律事務所が社外取締役を引き受けない・抑制する理由が「利益相反取引の禁止」です。たとえば、A弁護士がX社の社外取締役になれば、X社の利益に尽くす義務が生じ、原則A弁護士はX社の属するY業界の競合会社Z社とは取引できないというものです。「6つのパス」をリサーチするにはクライアント企業の内部情報を基に詳細な理解をした上で行わねばなりません。私がいたころの日本マーケティング研究所(JMR)グループは、幾つかの会社に分かれていたのは「利益相反取引の禁止」を徹底していたからです。どこよりもクライアント企業のことを専門的に深く理解し、クライアント企業にとって結果が得られるまでトコトンお手伝いする「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」・・・・そんなマーケターは少なくなってしまいました。最近米国企業などで見かける肩書に”Business Development”があります、米国ではキチンとそういう人材を社内に置く企業も少なくないのです。

1988年転職し中堅中小企業様の経営コンサルティングに従事し、教育研修や経営計画策定などのコンサルティング業務に従事し、1996年神戸の田舎で独立し個人事務所としてコンサルティングを続けていました。2004年㈱MCプロジェクトを設立し、”Business Development”ができる「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」をもう一度目指しはじめました。”Business Development”ができる「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」ですから1業種1社のクライアントを順守し、経営の原則的な特定のクライアント企業からの売上総利益が1/3以上を占めないということは無視し過半を占めてもよい、どこよりもクライアント企業のことを専門的に深く理解しクライアント企業にとって結果が得られるまでトコトンお手伝いする、これらを当社のルールとしています。クライアント企業の利益のために働き、クライアント企業からオファーがなくなれば(取引停止、社員様なら解雇)現在の生活に窮する・・・・言わば、企業内でチャレンジする管理職の方々と同じようなポジションです。経営者の方と直接信頼関係が築ける機会がある外部専門家と言う部分では少し違いがあるかもしれませんが、企業の一定の地位にある管理職の方とそう変わりなく、クライアント企業の経営者・取締役ではありませんので、全社的な企業革新を推進する権限もありません。クライアント企業の”Business Development”のためには私もマーケティングだけでなく、現場の実務で使い貢献するためにBigData解析技術やITC技術も身に付けてきました。それらも一つの手段(Mean)としてクライアント企業にとって受容してもらえるリスクの範囲内で近い将来役に立つであろう新たなビジネスを開発する小さなクライアント企業内の社内ベンチャーを立ち上げようと㈱MCプロジェクトを設立しました。

自社商品を持っていると言ってもクライアント企業は、年商数億円~数百億円規模です。日本の99.7%を占める中小企業様です。意欲的な経営者の方が新しい市場の創造に取り組まれるのをマーケ屋(マーケティングの外部実務家)として実務参加しながら”Business Development”の推進をお手伝いしています。意欲的な経営者の方の直轄といえども数名のプロジェクトからスタートして行きます、小さな社内ベンチャーです。「ブルー・オーシャン戦略」でも「3章ブルー・オーシャン戦略を実行する」以降の章は企業革新に繋げていく内容になっています。小さな社内ベンチャーがどう育っていけばいいのか、2008年ごろまだ参考になる経営の専門書はなかなかありませんでした。2010年ごろから小さな社内ベンチャーの”Business Development”をお手伝いする機会を得ました。ここで、原書2009年S.D.サラスバシー氏の「EFFECTUATION」(2015年訳本出版)が役立ちました。

あるクライアント中小企業における社長直轄の数名の小さな社内ベンチャーによる「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のスタートでは、ブルー・オーシャンを創造するための6種類のアプローチ「6つのパス」から、現在の利害関係者と今何ができるか(手段:Means)を明らかにして、クライアント企業の経営者がどこまで損失を許容されどう実行して行ってもよいのかのコミットメントを得て、経営者にプロジェクトの進行状況等の報告・相談を月に1~2回必ず行い、確実に成果を積み上げるよう「EFFECTUATION」の熟達した起業家の行動論理を参考に実践支援していきました。社内ベンチャーのようなプロジェクトは当初各部署からの成果は初年度売上高1億円程度くらいの売上総利益でプロジェクトの固定費を賄える程度のものからスタートしました。社内だけでなく既存業界周辺の新しい市場の販売先パートナー候補にも認知されそこからオファーを得て、新たな取り組み課題にもチャレンジする機会を得ることができました。エフェクチュエーションでいう驚きの積み重ねですが、その度に「ブルー・オーシャンの6つのパス」を使いチャレンジできる実行可能な手段(means)等のアイデアを捻り出し、損失リスクが経営者の受容範囲かどうかのコミットメントを得て、実行し成果を積んで行きました。将来予測ではないが、「ブルー・オーシャンの6つのパス」の質的なマーケティング情報を集め、各段階で明確な優位ポイントを形成する実行可能な手段(means)を捻り出し、その優位ポイント形成の魅力と損失リスクに対するトップ・マネジメントのコミットメントを得るのがマーケティングを担当する者の役割でした。プロジェクトの初めから戦略と目標があったわけではなく、こうした積み重ねで数年かけ数十億円規模の事業部となりました。現在は、得られた「新しいビジネス・新たな経営資源」を社内共有し、全社シナジー効果をどう作り出しさらに企業成長していくかに取り組む「競争優位を築く」段階にあります。

「組織風土」「企業文化」も「人工物」であり、紡ぎだされるものだと私は考えています。

やろうとしていることの可能性を評価するのも、その可能性に対してどの程度の損失を許容するのかを提示しプロジェクトをコントロールするのはトップ・マネジメントです。手段(means)や利害関係者と相互協力・コミットメントし協業パートナーと市場を紡ぎ出そうとする企業内起業家がトップ・マネジメントにとって許容できるリスクの範囲でプロジェクトを起こすことから”Business Development”はスタートすると私は考えています。紡ぎだそうとする「市場や経営資源など」もその大きさは当初は分かりません、しかし経営者は、新しい市場の創造に取り組まなければなりません。場合によっては、既存事業を再成長または生き残らせることと同時並行に行う必要もあるでしょう。トップ・マネジメントの経営者・取締役は、プラグマティストのマーケターが「ブルー・オーシャンの6つのパス」から見つけた”Business Development”の小さな種を社内の小さなプロジェクトに蒔き、新しい「市場や経営資源」などを紡ぎだすまでエフェクチュエーションの論理を活用して育てて行くことで企業革新が少しずつ進行して行くと私は考えています。このエフェクチュエーションの”Business Development”プロセスを経て得られる新しいビジネス・新たな経営資源」を社内共有することによって新しい「組織風土」「企業文化」も作りだされて行くと私は考えています。

日本マーケティング学会会長・流通科学大学学長 石井 淳蔵 氏の2014年「寄り添う力」や学会でのサロンの講演でもこのように説いておられます。相手に共感する現場の実践がビジネスの知を生み、実践を重視するプラグマティズムのマーケティングを提唱されておられます。経営の研究者は後であれこれ論理を展開するけれども、重要なのは実践に当たり前はない。実践の価値を重視し、マーケティングでも業界発想や既存ルールに縛られず、いかに創造的な発想、創造的な適応を実現できるかであると語られています。顧客に寄り添うことで生まれる新しい価値やアイディア・取り組みを大切にし、顧客に寄り添う実践を通じて実践が理論を越える重要性を強調されています。プラグマティズムについては「寄り添う力」や「エフェクチュエーション」の書籍で理解を深めてください。私は”Business Development”の実践を支援するのを専門にする実務家で、参考にはしてはいますがここで説明できるほどの学術的見識はありません。

ただ、現場で重視しているのは「顧客」だけではなく、社内起業の投資家である「トップ・マネジメント」も同じように大切にしています。”Business Development”の小さな種を蒔こうとしているトップ・マネジメントが、「自社ビジネスの現状」と「どうありたいのか」とのギャップや課題認識・どこまでならやっていいと考えているのかなどをプロジェクトが理解することを重視しています。このようなプロジェクトだからこそ、トップ・マネジメントから種を蒔いても貰えるし、育つ環境を与えてももらえる。場合によっては、トップ・マネジメントが社内で成果を上げるようプロジェクトを援助する行動をとってもらえることすらあり得ます。社内起業の”Business Development”では、そのプロジェクトの進む先は予測可能なものではありません。普通にプロジェクトの活動計画を出しても、因果関係を重視するこれまでの経営理論(コーゼーション)による戦略と目標を求められ、それが出せないとスタートすらできません。”Business Development”のマーケティングで必要なことはまず、ブルー・オーシャン戦略の一部「6つのパス」から「戦略キャンパス」を描くのを活用し仮説的なものとして近い将来企業成長に役立つ「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のアイデアとそれる実現する今やれる手段を創造することです。そして次に、リスクを最小にして最大の成果を出す小さくても「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のポジショニングを明確にしてトップ・マネジメントとinteractionを図ることです。コンプライアンス(株主代表訴訟を含む)などトップ・マネジメントがリスクをとって新しい取り組みしにくい現代の日本の経営環境下、トップ・マネジメント決済でスタートできる(受容してもらえる小さな失敗の損失の範囲で始める)コミットメントを得るための社内マーケティング(インターナル・マーケティング)が”Business Development”で求められます。

 

エフェクチュエーションの和訳本は非常に高価です。また、本の内容も経営学の研究者向けの部分も非常に多く、実務家にとっては、4章・5章のあたりが重要な部分です。この部分だけ以下に簡単に抜粋いたします。

 

起業家は、多次元的な不確実性の下で、どのようにして合理的に」に振る舞うことができるかを明らかにした論理がエフェクチュエーションです。

このロジックは、

●非予測的:確率の事象空間を、既知で不変のものとして扱わないこと

●非目的論的:選好や目標を、所与で変更不可能なものとして扱わないこと

●非適応的:環境を外的なもの、または適合の対象として扱わないこと

を満たなければなりません。こうした論理は、「デザイン」の論理であり、「選択」の論理ではありません。(2009年S.D.サラスバシー エフェクツエーション 第4章 エフェクツエーションを理解する:問題空間と問題解決の原則 P129)

エフェクツエーションの最近の動学モデルは、下図のようなものです。The effectual cycle

Effectuation: Society for Effectual Action http://effectuation.org/ より

それぞれの要素についての説明は後にして、この動学モデルの中心となるのは、エフェクチュエーションに基づくコミットメントの発想であり、それは次のような特性をもつものです。

1.予測可能性ではなく、未来や外的環境のコントロール可能な側面を重視する。さらに、コントロール可能なものに転換できない予測可能な情報は避けられる。

2.それぞれのエフェクチュアルな行為者は、損失を許容できる範囲内でコミットする。目標利益や成果を達成するために必要だと予測されたものに対してコミットメントするのではない。

3.ネットワークの目的は、実際のコミットメントを行う人々によって、彼らの交渉によって決定される。予め決められた目的によって、誰が経営(ビジネスへの関与)に参加するのか決定される訳ではない。

4.ネットワークが拡大し、可能な「手段」が増加するに従って、「目的」はより多くの制約を受けることになる。

言い換えれば「人工物(市場)がどのようなものになるか」は、時間の経過とともに、関与者が欲するものが手に入ることが分かるに従って、次第に固まってくる。

5.このプロセスの鍵は、それが代替的な手段であれ目的であれ、代替的選択肢の中から選択することではなく、既存の現実を新しい代替案へと変容させることです。

(2009年S.D.サラスバシー エフェクツエーション 第5章 エフェクツエーションを理解する:エフェクチュアル・プロセスの動学 P144)

 

エフェクチュエーションの動学モデルを構成する、「デザイン」の論理であるエフェクチュエーションの5つの原則(行動のための基準)は次のようなものです

1.「手中の鳥」の原則:手段(MEANS)からスタートし新しい結果を創る。

「問題フレーム(the problem flame)は「特定の手段(実行可能な)を使って、可能な結果をデザインする」というものであり、モデルは「一から多の関係図」で構成され、エフェクチュエーションのプロセスは、スタート時のゴール(目的)にかかわらず1つ以上の結果を起業家が作り出すことを許容するものです。

新しい企業(事業)や市場を作る上で、「アイデンティティ(identity)」と「知識ベース(Knwledge bace)」と「社会的ネットワーク(social network)」が重要であり、これら3つの手段のカテゴリーから実行可能な手段から構成される新しい事業の最初の展開(起業家が何をするかを、ステークホルダー:利害関係者と相互作用すること)をスタートさせる。

※アイデンティティは、特定の結果に対する選好ではなく、特定へのプロセスへの選好・または生き方や決定の仕方に関する選好から構成されます。アイデンティティは架空のものでも本物でも・自由に選択されたものでも社会文化的に構成されたものでも・良いものでも悪いものでもあり得えます。

アイデンティティは、選好が存在しない時に、選好を構成するのに役立ちます。選好が未知である時に、小さく始める実験的取り組みを許容することができます。またそれは選好における変化が勝手に起こらないように、選好を上手く取り扱うことも可能にします。また、選好が「悪い」モノである場合に、アイデンティティは自分を律するためにどのような自制を行うべきか教えてくれます。

「アイデンティティ(私は誰であるか?)」は、「知識(何を知っているか?)」や「ネットワーク(誰を知っているか?)」に依存しており、それらによって変化する可能性があり、また逆も然りであり、それぞれ排他的でもなく独立したものではありません。これらを総体として、リソース(何を持っているか?)を規定しています。「何を持っているか(what I have)」と「どこにいるか(where I am)現在自分が置かれた状況」は、両方ともこれらの最重要な手段の派生型です。しかしこれらのあらゆる入手可能な手段が重要なのではなく、それらを使って起業家がなにをするかをステークホルダーと相互作用を開始することが重要なのです。

2.「許容可能な損失」の原則:Affordable Lossを判断基準にして意思決定する。

エフェクチュエーションは、その人(熟達した起業家)は、「いくらまでなら損していいか」を決めることから始めて、しかる後に、限られた手段(means)を梃子として創造的に活用することで、新たな目標となる新たな手段を作りだすことを重視します。起業家は、どこまでなら損失を許容できるかの推定に基づいて、どのようなベンチャーを興すのかを決定する。その上で経営に参画してくれるステークホルダー:利害関係者を集め、世の中で利用可能な余剰資源(リソース)を創造的に活用するために、ベンチャーを興すプロセスに取りかかる。エフェクチュエーションは、特定の新しいベンチャーを興すにあたり、許容可能な損失の原則を、自発的な関与者と彼らの持つ「新しい市場機会を具現化し、構築する能力」とを組み合わせ、それを新しいベンチャーを選択する上での判断基準とする。許容可能な損失の原則は、起業家自身が集められる手段の範囲で、アイデアを市場に持ち込むための創造的な方法を見つけ出すことを促す。許容可能な損失の原則を用いることは、エフェクチュエーションに基づく行為者に、地理的・社会文化的な近接性、社会的ネットワーク、専門的領域にかかわらず、身近な場所に関与者を見つけることを要求する。さらに、すでに理論化され認識されている「市場」や、そのアイデアについての戦略的領域に縛られない選択をすることによって、エフェクチュエーションに基づく行為者は、最終的にどの市場で事業を展開し、どのような新しい市場を創造するのか、について驚きに開かれている。

 

3.「クレージーキルト」の原則:利害関係者とInteraction Commitmentし協業し市場を紡ぎ出す。

エフェクチュエーションは、不確実性を減らして参入障壁を作るために、関与者の事前のコミットメントや相互協力を強調する。「クレージーキルトの原則」は、今後経営にかかわるか関わらないかもしれない潜在的な関与者について機会コストを考えるのではなく、実際にコミットをした関与者を考慮に入れるべきだとする。

主要な関与者からのコミットメントは、未来に対する特定の次元について契約することで不確実性を無効化し、そしてそのネットワークが成長するにつれ、未来はその契約で合意されたとおりに見えるようになる。エフェクチュアルな起業家は、まずビジョンを作り、それをターゲットとなる関与者に押し付けたり、“売り込んだり”するのではなく、関与者同士の動的な相互関係から、未来が融合されていく姿に対して取り組みを集中させる。

特定の市場にこだわらないことによって、関与者とのパートナーシップのパッチワークによるキルトが成長し、それは新しい市場に結実するか、最終的にどの特定市場で新しいベンチャーの事業が固まるかを決定するのである。

4.「レモネード」の原則:不測の事態もリソースとして捉え(Leverage Surprise)価値や利益に転換する。

「計画」「偶発性」「不確実性」の三者間の関係は、エフェクチュエーションの論理では、劇的に再編される。エフェクチュエーションに基づく行為者は、目標を緩やかにしか設定せずに始めることが多く、「計画」は徐々に作られ、不確実性や偶発的な情報は、目標を達成するための「リソース」として活用する。資源の獲得と選択を規定する要因としての「目標」に依存しない、ゆえに意思決定者は彼らが選択した結果の範囲内で、「経路依存性」を蓄積し有効活用するのである。つまり、「不確実性」は不利をもたらすものではなく、「リソース」であり、「プロセス」なのである。

エフェクチュエーションの論理では、驚きはむしろ価値創造のための機会の源泉であると考える。ただしそれが可能になるのは、新しい可能性を生み出すために、驚きを用具的なやり方でとらえ、さらに想像力に富んだやり方で、驚きと既存のインプットと組み合わせる時のみである。

5.「飛行機の中のパイロット」の原則:非予測的コントロールで新商品・新市場・新企業を創造する。

エフェクチュエーションは、「予想できない未来のなかのコントロール可能な側面」に焦点を合わせる。この論理的前提は、未来がコントロールできる範囲では予測は不要だ、というものだ。人間の行為が未来を形成する主たる要因である場合に「非予測的コントロール」の論理が有用である。

熟達した起業家は、何が合理的か、つまり何が「実行可能」で、なにが「実行に値する」かを経験を通じて確認する。言い換えれば、彼等は、まず行動に移せる仮説を立て、世界に対する行為や他者との相互作用を通じて、実際にそれを具体化する、あるいは書き換えるのである。

「Knightの不確実性」「目標の曖昧性」「環境の等方性」で特徴づけられる問題空間においては、エフェクチュアルな行為者は、「Knightの3つ目の壺」に対処する唯一の方法は、すでに手元にある身近なものを使って、ともかくやってみることだと主張する。

熟達した起業家の中には、自殺の第4象限(新市場・新製品)を好む傾向がある。もし市場が予測可能であればあるほど、もっと賢くより多くの資源を持つ別の誰かがそこを独占できてしまう。市場が本当にそこに予測できない場合こそ、小規模でスリムな、センスの良いスタートアップの起業家に、革新的で価値のあるものを作るチャンスが生まれる。いいかえれば「自殺の第4象限」においては、飛行機のパイロットが必要なのだ。

(2009年S.D.サラスバシー エフェクツエーション 第4章 エフェクツエーションを理解する:問題空間と問題解決の原則 P94~124)

カテゴリー: 未分類 パーマリンク

コメントを残す