私の今のIdentityは「Pragmaticに活私利他」

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私の”Identity”という概念との出会いは1978年産業心理学専攻の1年の英語の授業でした。
I am what I am And That is what I am. ポパイの歌の一節を取り上げ、心理学におけるアイデンティティ(Identity)を解説する英語の教科書でした。
Identityは米国の発達心理学者のエリク・ホーンブルガー・エリクソン(Erik Homburger Erikson)が提唱した概念です。
この分野でマーシャのIdentity・ステイタス研究が,多くの研究者に対して刺激を与え,その後のIdentity研究を発展させるきっかけになりました。そしてIdentity理論の対象とする領域の拡大・性差の検討・Identity形成のプロセスの精緻化・コーピングcoping(対処)との関連・認知的な情報処理スタイルの個人差の検討・社会的文脈や関係性を重視するモデルなどに関する研究がされてきています。Identity概念は青年期だけではなく成人期以降の心理社会的発達を理解するうえでも重要な概念になっています。

私は大学を卒業し中小企業の日本マーケティング研究所(日マケ)に入り、PC端末からダイヤルアップ接続の「ピーヒョロロロ~♪」というモデムで大型コンピューターに接続し購買心理の多変量解析・モデル化に取り組みました。1985年にそのご褒美でグループ主催のマーケティング米国研修に行かせてもらいました。その時の最終日にサンフランシスコのホテルで、日マケと関係の深かったD・A・アーカーさんと通訳の方を交えて3時間ほどお話ししました。アーカーさんは”Identity”と” Customer Relationship Marketing”について若造の意見を聞いてくださり、アドバイスや激励をしてくださいました。アーカーさんは後に1990年代後半に経営学の世界でブランド戦略の第一人者になられました。著書の中で”Brand Identity”の記述があります。

カーネギー学派のサラス・サラスバシーの「エフェクチュエーション」(実効論)では、
●自分が誰であるのか?(who they are?)特質、能力、属性
●何を知っているのか?(who they know?)教育、専門性、経験
●誰を知っているのか?(whom they know?)」社会的ネットワーク
これらを資源に、外部環境を新しい未来へと作り変えるための有用なデザイン論理としての行動のための基準5つの原則を提供しています。
「エフェクチュエーション」発表の間もないころ(2008年ごろ)原書に出会い1年がかりで読んで、私はビジネス分野での”Identity”を確立・拡張する指針のように活用してきました。
認知心理学に基づくカーネギー学派の特徴は、「限定された合理性」です。これは「人は合理的に意思決定をするが、しかしその認知力・情報処理力には限界がある」。だから「現時点で認知できる選択肢の中から、とりあえず満足できるものを選ぶ」(satisficing)意思決定をし → 実際に行動を起こし → 行動の結果、意思決定者の認知が広がり → 新しい選択肢が見え →「より満足できる選択肢を選ぶ」・・・・このようなPragmaticなプロセスを重視しています。

自分が属するsociety(家族・仲間・会社・地域社会・国家など)やそのstakeholder(利害関係者)の存在意義や価値が活かされる外部環境が安定しているのならば、確立されているIdentity(●who they are? ●who they know? ●whom they know?)の選択肢認知のレベルは高く、意思決定も合理的に行なうことができます。保守的に環境に適応する選択肢を合理的に選ぶ意思決定を行ない存在意義や価値を維持して行くことができます。
自分が属するsocietyの存在意義や価値を活かすために、外部環境を新しい未来へと作り変える必要があるときには、search(探査・探索)行動によって認知レベルを高め限られた選択肢を広げ、革新的なPragmaticなプロセス重視の行動をして行けば、外部環境さえも変えられる可能性が出てきます。
現在、私は自分なりに、このように理解して仕事だけではなく生活にも活用しています。

最近の経営学関係では、自社の存在意義を明確化し社会に与える価値を示す「パーパス」が企業経営で注目されているようです。しかし、私は現在あまり関心がありません。社会に与える価値を示す「パーパス」策定には、外部環境を新しい未来へと作り変える必要があるときには、search(探査・探索)行動によって認知レベルを高め限られた選択肢を広げ、Pragmaticなプロセス重視の行動をし、その結果から意思決定者の認知を広げるresearch(調査・研究)を行い 、 新しい選択肢を広げる、このような行動がなければ、価値はないように思えるからです。部環境が安定しているのならば競争力を強化するために「パーパス」は有効だろう。しかし、外部環境を新しい未来へと作り変える必要があるときには、このようなPragmaticプロセスの行動をぬきにして「パーパス」を策定しても経営が革新され上手く行く可能性は非常に低いだろうと思う。Pragmaticなプロセス重視の行動をして得た知見を自分が属するsocietyに共有するために「パーパス」というフォーマットを活用し、Identityを確立する助けに使うのならば価値はあると思う。

生活にも活用しているというのは、「信条」としていると言ってもいいでしょう。
あと1年ちょっとすれば私は65歳を迎えるます。私の属する家族や地域の環境をほんの少しでも未来に向けてあと数年(私が70~75歳ぐらいになるまで) 作り変えるために私に何ができるか選択肢を広げるsearch活動をし、「認知できる選択肢の中から、とりあえず満足できるものを選ぶ」(satisficing)意思決定をし、実際に行動を起こし、次の世代が近い将来に選べる選択を広げることができていればいいな、と考え生きています。
これが65歳になろうとする私の今のIdentityです。

MCプロジェクト 代表 坊池敏哉

カテゴリー: 信条 パーマリンク

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