サーチ・演繹的分析による革新的な事業展開

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サーチ(Search)とは探索・追求、リサーチ(Research)とは研究・学術調査、のようなニュアンスの違いがあります、どちらも「調査」という日本語で混同されがちです。

経営学ではSearchが論文で提起されているのは、1958年カーネギー学派のマーチとサイモンの「Organizations:オーガニゼイションズ」しょう。
サイモンの「Admininistrative Behavior :経営行動」をベースに、Search(サーチ)とAspiration(アスピレーション)という重要な概念を加え組織意思決定の循環プロセスモデルを「Organizations:オーガニゼイションズ」で提示しました。詳しくは早稲田大学大学院・ビジネススクールの入山章栄教授の「世界標準の経営理論」第11章を参考にしてください。

ハーバート・サイモンの最後の愛弟子のサラス・サラスバシー教授の「エフェクチュエーション」(加護野忠男監訳、高瀬進・吉田萬梨訳)のパートⅡ理論的探縫エフェクチュエーションの5つの行動のための基準のベースに私は「Search」の概念が流れていると考えています。
革新的な新規事業を起こし成功させるには、コーゼーション(Causation:リサーチから得られた原因・因果関係)の将来予測に基づくのではなく、ベンチャービジネスを複数回成功させた熟達した経営者の行動論理「エフェクチュエーション」が重要だと提起しています。
5つの原則の底流には、師匠のサイモンの高い視線のAspiration(アスピレーション)とSearch(サーチ)という組織意思決定の経営行動がベースにあると考えるのは自然なことでしょう。
経営学で認知心理学に基づくカーネギー学派を特徴づけるのは、「限定された合理性:人は合理的に意思決定をするが、しかしその認知力・情報処理力には限界がる」というものです。
「Admininistrative Behavior :経営行動」では、「限られた選択肢」→「現時点でのとりあえず満足できる選択」→「実際の行動」→「行動することで認知が広がり、新しい選択肢が見える」→「より満足な選択」というプロセスの意思決定を想定しています。

革新的な新規事業を起こし成功させる認知力は、サーチと仮説を構築する論理的思考(論理学の演繹法、経営理論など検証された理論・理論を活用するフレームワーク等)などによって構成されるのだとうと私は考えています。
論理的思考(ロジカルシンキング)はよく聞くと思いますがコーゼーション(Causation:リサーチ・分析から得られた原因・因果関係や論理学の帰納法)に基づくものが多いでしょう。
サーチはたとえば、どのような技術やノウハウ(シーズ)や市場ニーズが形成さるか・周辺業界の産業構造などのオープンになっている情報を集め演繹的に初期仮説を組んで、情報のウラドリ確認ができるキーマンを明らかにしヒアリング・情報交換しながら、そのなかから仮説を実行していくとき協力してくれそうなステークホルダーのアタリも付ける・・・・実施可能な演繹的仮説構築・・・・このようなモノだと私は理解し実践しています。
事業がうまくいっているときは、自社が直面している「認知の周辺」(ローカル・サーチ)で行われがちになります。サイモンの高い視線のAspiration(アスピレーション)によってこの傾向を乗り越え「より遠くの選択肢」をサーチして行くことが新しい知の創出すなわちイノベーションに繋がる可能性があるでしょう。

サーチ結果は、演繹的な初期仮説のウラドリはしていますがエビデンス(仮説の検証結果、効果を証明するもの)はありません、「自社には何が実行可能で」・「コミットしてくれそうなステークホルダーの存在」・「上手く行かなかったときの損失はどのくらいか」・「仮説を実行することで可能性がどのように広がりそうか」ぐらいをプロジェクト企画にまとめ、経営トップにAdministration(政権・本部・経営陣がその組織の方針を設定し導く⇒新しい市場・環境を創り出していく管理)を求めます。
経営計画の中に位置付ける規模ではない範囲で(経営トップ直轄の小規模な体制・投資)企画するようにしています。
仮説を実行し、実践で得られた知見やステークホルダーを積み重ね、戦略的事業単位に位置づけができるようなコーゼーション(Causation:リサーチ・分析から得られた原因・因果関係)が導き出せたら、経営計画に盛り込みます。
リサーチは、調査や分析によって仮説を検証するものです。確かに新しいニーズなどもリサーチによって導き出せるかもしれませんが、ベンチャー的社内起業は仮説・実践が無ければ検証・分析から導き出すことは難しいでしょう。

統計学の分野では、「ベイズ統計学(ベイズ推定)」というものが18世紀末から19世紀初頭ごろからあります。21世紀に入ったころからGoogl・インテル・マイクロソフトなどがビッグデータからの不確実な将来予測をする分析等では、客観的解析から主観的「事前確率」を含めた解析であるベイズ推定などの分析手法を活用してきています。
多くの科学(数理科学)も仮説構築は演繹法から設定することが多く、仮説から理論を構築するには本質的には数理モデル(帰納法)によって得られます。科学者は、有用な理論を生み出すのに十分な構造を備えたモデルをまず考案しなければなりません。理論は複雑な要因の影響がない再現性の高い状態でのモデルとなります。理論を複雑な要因が関係しあう最近の経営などの予測困難な現場で使うときは、そのモデルだけでは全く役に立たないケースも多くあります。
最近の先端IT分野にかかわる統計学者や機械学習エンジニアなどパラメータ推定の専門家らは、違う考えを持っています。ベイズ推定だけではありませんが、「正しい問いへの近似的な解の方が、間違った問いへの正確な答えよりもはるかに良い。」という考え方です。理論モデルの推定(予測)は正確ですが、理論モデルの前提が現実に当てはまっていなければ全く役に立ちません。コンピュータの処理能力が指数関数的に向上し、ベイズ推定などの膨大な情報処理も比較的簡単に行えるようになりました。現実の状況にあった問いへの、近似的分析結果が得られやすいベイズ推定(複数の要因が絡むなかでの主観的・経験的「事前確率」を設定したときの起こりうる確率などを推定する)が行えるようになってきました。
主観的「事前確率」をどう設定するかなど創造力・想像力が必要な時代では分析者のセンスが試されます。不明確・不鮮明なものを解明する場合や代替案の選択で効果を発揮する演繹的仮説構築に役立つ分析方法は、アートのようなものです。「帰納的な数理科学は理論的には正確な答えを導くことができるが、正しく問いを立てることが難しい、問いを立てられないことも多い。」と言われています。理論をいくら知識として持っていても、経営などの現実世界で実際に使うには、正しい問いの設定をし理論の前提条件ではない状態で起こる確率(主観的・経験的な事前確率)を含めて検討しなければなりません、さらに要因は一つではなく複数が絡み合うのです。

日本における経営やマーケティングでも、ネットを活用した販促や広告に関連した分野では、統計学のこのような変化を取り入れてはいます。
革新的な新規事業を起こし成功させようとするサーチ(Search)は、経営やマーケティングの実務家が分析・仮説構築に活かすことができるものとして、経営理論の関係では早稲田大学の入山章栄教授の「世界標準の経営理論」、行動論理関係ではハーバート・サイモンの最後の愛弟子のサラス・サラスバシー教授の「エフェクチュエーション」(加護野忠男監訳、高瀬進・吉田萬梨訳)があるでしょう。
「エフェクチュエーション」の中で米国等のMBAの現場で課題は、サーチ行動を起こさせる指導のようです。
どのような技術やノウハウ(シーズ)や市場ニーズが形成さるか・周辺業界の産業構造などのオープンになっている情報を集め演繹的に初期仮説を組んで、情報のウラドリ確認ができるキーマンを明らかにしヒアリング・情報交換しながら、そのなかから仮説を実行していくとき協力してくれそうなステークホルダーのアタリも付け、実施可能な演繹的仮説構築をする「サーチ力」をどう身に着けていくか。
リクルート社の社風や企業風土などが参考になるかもしれません。また、「サーチ力」のある人材は、革新的な新規事業を起こし成功させようと独立して事業を起こしているでしょう。仮説構築をする「サーチ力」をどう身に着けていくか。
「サーチ力」は、どのような前提条件ができれば可能性が見いだせるのか・その経験的・主観的事前確率を想定し、新事業構想を作り、ステークホルダーにプレゼンしコミットメントが得られたところと実行に移してみて、新事業構想を事業計画化できるまでに進化させるものだと考えています。エフェクチュエーションの「クレージーキルト」という概念は事業進化という点で重要だと思っています。クレージーキルトとは不規則な形の布を組み合わせ縫い合わせ価値ある作品に作り上げるものだと私は理解しています(少し違うのかもしれませんが)。「限られた選択肢(不規則な多くの布から選び抜く)」→「現時点でのとりあえず満足できる(仕上がりイメージの可能性)選択」→「実際の行動(仕上がりイメージに組み合わせ縫い合わせてみる)」→「行動することで認知が広がり(縫い合わせたキルトの価値を問うてみる)、新しい選択肢が見える(新しい布片が集まり)」→「より満足な選択(より魅力的な断片の組み合わせ縫い合わせをする)」。これは生物の進化と似ているのではないかと考えています。生物の遺伝子変化は交配などによって起こり、環境適応できた遺伝子が残り進化していきます。生物の進化は、進化しようとして遺伝子の変化を起こすのではなく、交配の結果生まれた命が生き延びる環境を見つけ交配を重ねるなかで起こるものだと思います。どんな環境(新市場)に移動し、求愛行動(事業仮説)を、どんなパートナー(コミットメントしてくれる利害関係者)にし、選ばれて交配(新しい事業を一緒に創造する)し、どんな子孫(新規事業)が生き残りコミュニティー(市場環境)を形成し交配を重ねていくかによって事業は進化するのではないかと考えています。「サーチ」は単に調べればいいというものではないと考えています。経験を積ませる機会や仕組みを用意し、許容できる損失の範囲内で、実際にやらせてみることだと思います。その途中で障害や課題が出てくるのは当たり前で、それをチャンスに変えられるやり方に取り組んでみさせるなど、経験学習のための環境作りが必要でしょう。

ベンチャー的社内起業をどう起こさせるかが課題です。
経営計画の中に位置付ける規模ではない範囲で(経営トップ直轄の小規模な体制・投資)、「自社には何が実行可能で」・「コミットしてくれそうなステークホルダーの存在」・「上手く行かなかったときの損失はどのくらいか」・「仮説を実行することで可能性がどのように広がりそうか」ぐらいの「社内企画」が出てくるようにする。簡単なようで難しい、これをサポートするのが私の役割にして支援しています。
その上で、戦略的事業単位に位置づけができるようなコーゼーションが導き出せる規模になれば、リサーチによって仮説検証が可能です。既存事業もリサーチによって、仮説・検証を行うコトができます。

最近の私はITやAI・最新の解析技術を活用したリサーチよりも、仮説をたてたうえで蓄積されたビッグデータをいかにマイニングし分析し読取り事業成長に繋ぐかを大切にしています。
AIもデータ情報を蓄積したものを活用したらよい結果が得られるものではありません。ゴミのようなデータ情報が入るとゴミのような結果しか出せません(Garbage In, Garbage Out)。機械学習だけではなく40年前私が多変量解析を行っていたころからの統計分野で当たり前のことです。
私は5年ほど前(60歳になる前ですがもう老人の域です)にPythonを使ってAI開発にトライしたりもしました。クライアントのデータをRで解析し事業・営業に役立つモデル開発ができるようにし、結果を現場に活用してもらえるようにする方が今は役立っています。データベース・解析・モデル開発の仮説を構築し実践するのも昔ほど莫大な投資はいらなくなっています。社内人材でやれるようにすべきでしょう(零細コンサル会社:社長一人の個人経営の株式会社の当社が自社負担でできるレベルです)。

私は研究者や学者などの専門家には向いていませんし、教育系などの経営コンサルにも向いていないと思います。大学を出てサーチ系のマーケティングを利益相反しない1業種1社クライアント密着型のマーケティング会社で社会人スタートしました。ストレス等から失明しかけ2年弱の後に神戸の小さな経営コンサルに転職し、阪神淡路大震災の後コンサル会社の復興ができたのを機会に独立しました。独立し10年以上試行錯誤し、上記のようなスタイルで10年以上やってまいりました、独立して25年が経過します。来年には個人成りしますが、自分の会社は超零細で幕を閉じますが、試行錯誤している時期からお世話になった幾社ものクライアント様、神戸近郊の地方都市で成長を重ね非上場ながら4桁のグループ年商も見えてきたクライアント様などのおかげをもちまして、これまでの私がやってきたことを総括するなら「サーチ・演繹的分析による革新的な事業展開が大切だ」となります。これからも今しばらくよろしくお願いいたします。

 

2021年12月17日修正加筆(演繹法・帰納法・ベイズ推定等と科学・経営の現場について加筆修正)

株式会社MCプロジェクト 代表取締役 坊池敏哉

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