エフェクチュエーションの「手中の鳥の原則」とブルーオーシャン戦略

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ビジネス・デベロップにおける、マーケティングの活用について、エフェクチュエーションの手中の鳥の原則の何からスタートするかは、「ブルー・オーシャン戦略」の前半の部分が役に立つと思います。

経営戦略として全社的に取り組む部分を別にすると、ブルー・オーシャン戦略の中核は、コストを押し下げながら、買い手にとっての価値を高める状態の、バリュー・イノベーションを探し出せということに尽きます。ブルー・オーシャン戦略の書籍では下図のようにあらわされています。

ブルーオーシャン戦略:バリューイノベーション

ブルーオーシャン戦略:バリューイノベーション

第1部ブルー・オーシャン戦略とは 第1章ブルー・オーシャン戦略を生み出す バリュー・イノベーション:ブルー・オーシャン戦略の土台 P62

 

コストを押し下げながら、買い手にとっての価値を高める状態の、バリュー・イノベーションを探し出す分析のためのツールは次のようなものです。

ブルー・オーシャン戦略で「戦略キャンパス」の柱をなす競争の要因ごとのパフォーマンスを表す「価値曲線」を描き、4つのアクションによって既存業界・競争企業と明確に違う競争の要因を追加したり思い切った強化で違いを明確にし、取り除いたり減らしてコスト競争力を高める自社の価値曲線を描くことを求めています。

戦略キャンパス・価値曲線については、以下のような例が上げられています。

「第1部ブルー・オーシャン戦略とは」「第2章分析のためのツールとフレームワーク 戦略キャンパス P73」で取り上げているのが、オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズのカセラ・ワインズが2001年6月に出した「イエローテイル」というブランドのワインです。その戦略キャンパス(価値曲線)は次のようなものです。

ブルーオーシャン戦略:戦略キャンパス・価値曲線

ブルーオーシャン戦略:戦略キャンパス・価値曲線

図の出展:第1部ブルー・オーシャン戦略とは 第2章分析のためのツールとフレームワーク 4つのアクション P81

 

「4つのアクション」によって、「誰もが気軽に楽しんで飲めることを目的に造られたワインであり、その戦略は同業他社と争って顧客を奪い取るのではなく、従来からビールやカクテルに親しみ愛飲していた人々をワイン市場へと引き込み、新たな客層を開拓する」価値曲線を引きました。

カセラ・ワインズは本来ワインの特徴となるべき「タンニンの抽出やワイン熟成」といった要素を取り除き低コスト化を図り、「渋味の刺激が穏やかな低タンニン、残糖が1L中8~10gの普通のワインより甘くやさしい酸味で果実味が豊か」なのを重視しました。イエローテイルをワインではなく「ビールやカクテル」のように手軽に買ってすぐ飲み切るタイプのお酒のポジショニングに仕上げたのでした。私はオーストラリアのことは全く分かりませんが、米国のホームパーティーはBBQなどフレンドリーなもので、欧州のワインの食文化とは違いビールやカクテルでワイワイやるスタイルで、ワインではなくこのポジショニングにイエローテイルがあると個人的な体験から理解しています、だから日本ではたいして流行らなかったのでしょう。オーストラリアに生息する特に可愛らしいと評判のロックワラビーの“黄色い足”にちなんで命名された「イエローテイル」は発売後、わずか2年足らずでアメリカ市場を席捲し、輸入ワインNo.1の座を射止めてしまいました。

ブルーオーシャン戦略:4つのアクション

ブルーオーシャン戦略:4つのアクション

ブルーオーシャン戦略:4つのアクションの例

ブルーオーシャン戦略:4つのアクションの例

図の出展:第1部ブルー・オーシャン戦略とは 第2章分析のためのツールとフレームワーク アクション・マトリクス P85・86

 

「戦略キャンパス」の「価値曲線」は、アクションマトリクスの結果から表わされますが、ポジショニングが分かりやすい。どのような価値曲線がいいのかを判断する視点としてブルー・オーシャン戦略の本では次のように述べられています。

 

戦略キャンパスを土台にして戦略策定プロセスを築いていくと、企業とその経営者、マネージャーは、「森」すなわち全体像に注意を向けられる。戦略キャンパスを作成する効用は3つある。

  • 業界の戦略プロフィールが一目瞭然である。
  • 競合他社(潜在的競争相手も含む)の戦略プロフィール(何に力を入れているか)が分かる。
  • 自社の戦略プロフィール・価値曲線を通して、現在何に力点を置いているか・将来は何に力点を移すべきかが明らかになる。

ブルー・オーシャン戦略は、

  • メリハリ
  • 独自性
  • 訴求力のあるキャッチフレーズ

という、互いに補完関係にある3つの特徴を持った大きな可能性を持ったブルー・オーシャン戦略を描くことが必要である。戦略プロフィールがこのような特徴を強く持たない場合は、その戦略は混乱し、他社と差別化できず、コミュニケーションしにくいだろう。その上実行には大きなコストがかかるだろう。

第Ⅱ部ブルー・オーシャン戦略を策定する 第4章細かい数字は忘れ、森を見る 森を見る P141

 

一般的なマーケティング戦略等のポジショニングでは、2軸の「田の字チャート」を用いキチンとした数値でプロットして求めようとします。しかし、「戦略キャンパス」の「価値曲線」は多次元空間で構成されたポジショニングを平面の曲線に置き換え、「メリハリ」「独自性」「訴求力」があるかを視覚的に見せようとするものです。多次元空間の表現方法としてレーダーチャートもありますが、性能比較などで主に外に広がればよい性能を表すような使われ方をします。数学の多次元(3次元以上)の位相空間は、私たち一般の人間には分かりにくいものです。また精緻な消費者調査結果からクラスター分析を行うこともブランドのポジショニングなどでは行われますが「初期微動」は捕らえることは非常に難しいものです、また新市場・新製品のアイデアに繋がる情報をもたらすことも少ない。多次元空間のユークリッド距離などで近いものに無理やりクラスターにまとめられてしまいます。「価値曲線」では違いをはっきり出す軸を創造しなければなりません。「価値曲線」は単純なものに見えますが6種のアプローチで多次元的に一定レベルの仮説を持って質的情報を直接集め記録し、多次元の位相空間の中に「メリハリ」のある「独自」の「訴求力」のあるポジションを見つけ出すために情報を読み解き、そのポジションに立つために自社・我プロジェクトが実行可能な手段(means)体系までをも再考し、違いをはっきり出せる軸を創造して描けばインパクトのあるものが描けるでしょう。

 

では、どう描くのか? フレームワークは?

ブルー・オーシャン戦略では、調査会社に頼まず経営やプロジェクトのTOPが自分たちで、次の市場の境界を引き直すには6種類のアプローチでリサーチ会社などに頼まず直接調べて描けとしています。

ブルー・オーシャン戦略の第一原則は、市場の境界を引き直して競争を迂回し、ブルー・オーシャンを創造することとされています。

市場の境界を引き直すには6種類のアプローチがある。「6つのパス」

  • 代替産業に学ぶ
  • 業界内の他の戦略グループから学ぶ
  • 別の買い手グループに目を付ける
  • 補完財や補完サービスを見渡す
  • 機能思考と感性思考を切り替える
  • 将来を見渡す

詳細は、「ブルー・オーシャン戦略」の第Ⅱ部ブルー・オーシャン戦略を策定する 第3章市場の境界を引き直す を参照下さい。

 

なぜ直接自分たちで調べて描く必要があるのか?

まず自社と競合先の現在の価値曲線を描き、「いかに変えるべきか」の議論を始める前に現在の価値曲線を描き、今の自社に「メリハリ」「独自性」「訴求力のあるキャッチフレーズ」があるあるのかを明確にする。何より意志強固なリーダーの決断・抜き差しならない危機がなければならないからです。

そして、自分の目で現実を知る。現場に行き、自分の目と耳で直に、自社の製品やサービスがどのように使われているか・あるいは使われていないかを確かめる。真っ先に向かうべきは顧客のもとだろう。しかし、顧客以外の企業や個人をも訪問すべきである。顧客と実際の利用者が異なる場合、利用者にも訪問すべきであるとしています。

顧客や利用者にとって「戦略に魅力的なキャッチフレーズ」となるものを考えるのも、重要な課題であるからとも言っています。

 

ブルー・オーシャン戦略では、ここから先の部分は、全社的にブルー・オーシャン戦略を適応させようとしており、そのための内容になっています。

第4章細かい数字は忘れ、森を見る

ステップ3:ビジュアル・ストラテジーの見本市を開く

ステップ4:新戦略をビジュアル化する(全社レベルで戦略をビジュアル化する)戦略キャンパスを活用する&PMSマップを活用する(pioneer:パイオニアsetter:安住者migrator:移行者)

第5章:新たな需要を掘り起こす

第6章:正しい順序で戦略を考える

第7章:組織面のハードルを乗り越える

第8章:実行を見据えて戦略を立てる

第9章:価値、利益、人材についての提案を整合させる

第10章:ブルー・オーシャン戦略を刷新する

ブルー・オーシャン戦略で全社的に企業革新しようとするには、このような手順が必要だと思います。

 

経営TOPでなければなかなかそこまでできないし、経営TOPであってもブルー・オーシャン戦略で全社的に企業革新に踏み出せない各社事情があります。

“Business Development”ができる「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」を目指す私もそんな状況からのスタートです。クライアント中小企業における社長直轄の数名の小さな社内ベンチャーによる「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のスタートでは、ブルー・オーシャンを創造するための6種類のアプローチ「6つのパス」から、現在の利害関係者と今何ができるか(手段:Means)を明らかにして、クライアント企業の経営者がどこまで損失を許容されどう実行して行ってもよいのかのコミットメントを得て、経営者にプロジェクトの進行状況等の報告・相談を月に1~2回必ず行い、確実に成果を積み上げるよう「EFFECTUATION」の熟達した起業家の行動論理を参考に実践支援してきています。

抜き差しならない危機に直面してからでは遅すぎる。意志強固なリーダーであっても決断するには許容できるリスク・損失の範囲はある。

 

市場の境界を引き直す「6つのパス」、①代替産業に学ぶ、②業界内の他の戦略グループから学ぶ、③別の買い手グループに目を付ける、④補完財や補完サービスを見渡す、⑤機能思考と感性思考を切り替える、⑥将来を見渡す、これらを社長直轄の小さなプロジェクトを立ち上げてからやるのか、それとも立ち上げ前に行い経営者にプレゼンしてやるのか?

結論からいえば私どもの場合、”Business Development”の「6つのパス」は先行投資的に実施することがほとんどです。クライアント企業での経営やマーケティング関連の数値分析・マネージャークラスへのヒアリングなどを行い、現場の課題だけでなく何ができるか(means)・誰が協力してくれる可能性があるか・どこまでぐらいならやってもよさそうなのか、等ある程度把握します。クライアント企業の状況を把握した上で「6つのパス」を実施し、小さな今できそうな社内ベンチャー的「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」の種を見つけ出し、協力してくれそうなマネージャーとその仮説的な案を議論して相互作用が図れそうなら、経営者に提案しOKのコミットメントが得られればそこからがスタートです。「戦略キャンパス」を描くのを活用し仮説的なものとして近い将来企業成長に役立つ「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のアイデアとそれる実現する今やれる手段を創造し、リスクを最小にして最大の成果を出す小さくても「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のポジショニングを明確にしてトップ・マネジメントとinteractionを図り、コミットメントを得ることがスタートです。

そして「エフェクチュエーション」の動学モデルを活用し、エフェクチュエーションに基づくコミットメントを重ねて得られるようにして行くのです。

1.予測可能性ではなく、未来や外的環境のコントロール可能な側面を重視する。さらに、コントロール可能なものに転換できない予測可能な情報は避けられる。

2.それぞれのエフェクチュアルな行為者は、損失を許容できる範囲内でコミットする。目標利益や成果を達成するために必要だと予測されたものに対してコミットメントするのではない。

3.ネットワークの目的は、実際のコミットメントを行う人々によって、彼らの交渉によって決定される。予め決められた目的によって、誰が経営(ビジネスへの関与)に参加するのか決定される訳ではない。

4.ネットワークが拡大し、可能な「手段」が増加するに従って、「目的」はより多くの制約を受けることになる。

言い換えれば「人工物(市場)がどのようなものになるか」は、時間の経過とともに、関与者が欲するものが手に入ることが分かるに従って、次第に固まってくる。

5.このプロセスの鍵は、それが代替的な手段であれ目的であれ、代替的選択肢の中から選択することではなく、既存の現実を新しい代替案へと変容させることです。

(2009年S.D.サラスバシー エフェクツエーション 第5章 エフェクツエーションを理解する:エフェクチュアル・プロセスの動学 P144)

 

クライアント企業とのコンサルティング関係での信頼をベースにしますが、市場の境界を引き直す「6つのパス」、①代替産業に学ぶ、②業界内の他の戦略グループから学ぶ、③別の買い手グループに目を付ける、④補完財や補完サービスを見渡す、⑤機能思考と感性思考を切り替える、⑥将来を見渡す を、どこよりもクライアント企業のことを専門的に深く理解し、クライアント企業にとって良い結果が得られるまでトコトンお手伝いする「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」として行い、クライアント企業のmeansを引き出します。

私が30年近く昔にマーケティング・リサーチの会社でやっていたリサーチの中でも中間財・生産財の分野で「フィールド調査」と言われる非常に地味な分野です。統計学を使い分析するマーケティング調査とは異なり、クライアント企業のパートナーとしてクライアント企業の事業の現状を深く理解し、かつ常に競合企業や代替産業・関連周辺業界の情報を収集して置き、そこから必要な調査対象を抽出し、収集しておいた事前情報などからインタビュー項目と聞き取るべき内容のレベルを想定して、アポイントをとりデプス・インタビューし、戦略レポートにまとめクライアントに報告します。

当時との違いは戦略レポートで終わるのではなく、10年前に「ブルー・オーシャン戦略」が経営学の世界で提唱され「戦略キャンパス」の「価値曲線」でポジショニングとmeans(展開手段)を明確にするようになったところでしょう。しかし、これでクライアント企業において実践できるかというと、そうではありません。通常の大手企業なら事業計画書を求められますし中堅中小企業でも目標成果をどう設定するかを求められます。経営コンサルとしての立場から、エフェクチュエーションの動学モデルをベースに質的な戦略レポートで説明強化し小さなプロジェクトからスタートさせて行きます。

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