ビジネス仮説の発案(アブダクション)と質的帰納、人と組織を育てるマーケティングの考察

私は、Sarasvathy(2008)のエフェクチュエーションの原著に触れその起業行動論理をベースに、ブルーオーシャン戦略の事業発想のフレームワークを活用してクライアント企業の既存事業の拡大だけでなく新事開発をお手伝いしています。新事業開発は2010年から社員2名のプロジェクトをスタートし現在50億円の事業部に成長しています。
エフェクチュエーションもブルーオーシャン戦略の事業発想のフレームワークも、「ビジネス仮説」の生成が非常に重要な部分になりますが、その仮説生成の理論またはノウハウというものが私には先日まで明確には捉えられてはいませんせんでした。大学を出て日本マーケティング研究所(JMR)というところでの経験をもとにして私は「ビジネス仮説」を立ててきました。新規事業の展開は、事業計画ではなくビジネス仮説をベースにスタートは最小の人員と事業の仕組みではじめています。当然事業をスタートし展開していくとチャンスに繋がる局面も訪れます、それを逃さないようにさらにビジネス仮説を立て事業展開していきます。・・・・成功も課題も出てきます、必ず都度その事象の事実と原因を整理し次の展開案を立て直します、ビジネス仮説の検証と修正を繰り返しているのが実際です。これが「エフェクツエーションの動学モデル」の図ならば新しいMEANSとGOALSで「ビジネス仮説の修正立案」に当たりこれをテコの原理を使って作成し回していくスパイラル構造です。エフェクチュエーションの論理だけでは仮説立案の部分がひ弱です。

2008年に「アブダクション―仮説と発見の論理」米盛 裕二 著 の書籍は買って読んではいたのですが、「パースの記号学」の著者の本で、仮説を生み出だすためのパースの論理学の「アブダクション」の本だったな、何か人口知能の開発で話題になっていたなぐらいしか覚えていませんでした。
先日、「日本マーケティング学会」の<質的リサーチ研究会>で、京都大学で「マーケティング アブダクション KJ法の後工程としてのアブダクション、エフェクチュエーションの前工程としてのアブダクション」があるとの案内で、仮説生成のための「アブダクション」が急に気になりだしました。Deep Learningで人工知能を作る技術にも関心がありプログラミングから学びなおそうとしていることもありますが、「エフェクチュエーションの前工程としてのアブダクション」これに惹かれました。
さらには「デザイン発想ではなく、飛躍的推論に行き着くためのアブダクションについてのワークショップを行います。」Sarasvathyの師匠ハーバート・アレクサンダー・サイモン(Herbert Alexander Simon)のデザイン発想を超える「飛躍的推論」・・・・勝手な推測ですが興味をそそられました。
「デザイン発想ではなく、飛躍的推論に行き着くためのアブダクションについてのワークショップを行います。
その作業は、エフェクチュエーションの前工程として必要な飛躍的推論と位置付けています。」この説明文にすごく惹かれてしまいました。ハーバート・アレクサンダー・サイモンのいう「デザイン」と現在日本で使われているデザイナーが主役で発信している「デザイン発想」は違います、老マーケ屋の心に響きました。
予定が1つあったので参加できませんでしたが、「アブダクション―仮説と発見の論理」を引っ張り出して、再度熟読いたしました。60歳を前にした老マーケ屋が、仮説を大事に励んでいたころ「20代のころにこの本と出会っていたかった」と思いました。
私が気づいた結論は最後に書きますが非常に短いものです。ビジネス仮説の発案(アブダクション)と質的帰納、人と組織を育てるマーケティングとして、これまでのマーケ屋の私の経験を書きながら、最後に本当に短くまとめてみました。

【私の経験の部分です】
科学的分野での仮説は「ある現象を合理的に説明するため、仮に立てる説」といえるでしょう。
ある事象がある→それを合理的に説明するための仮説を立案→実験や観察で演繹検証→さらに広範囲に演繹検証→真理に近づく、このようなステップを科学ではとられます。
演繹検証は、前提が真実でなければなりません、結論の根拠となる前提条件が精査され信憑性が高く必然的にあるいは非常に高い確率で導かれていることが必要です。

ビジネスの世界では前提が、「真実」「必然的」というものはそうあるものではありません。
よくあるのは「7割くらいの精度で検証できればいい」・・・・ビジネスの世界では、統計分析で7割以上の精度で検証できればたいしたものです。パースの3つの帰納、「単純帰納」「量的帰納」「質的帰納」(詳しくは アブダクション―仮説と発見の論理2007/9/20米盛 裕二 著 などをお読み下さい)の「量的帰納」で統計学にもとづき70%の精度または確率での帰納ができれば上等です。Sarasvathy(2008)のエフェクチュエーションでは、コーゼーション(因果推論)に属する部分での精度と考えても良いでしょう。

こういったビジネスの分析の世界では、「仮説」がしっかりしていないと役に立たない分析結果しか出てきません、garbage in garbage outといわれています(詳しくはカスタマー・バリュー クオリティと顧客満足を高め収益につなげる ミシガン大学ビジネススクール マイケル・D.ジョンソン著を読んでみてください)。
この「カスタマー・バリュー」という本は、主成分・回帰分析(CPR)によってどの施策がどの位利益を生み出しているかを分析して世界的規模でコンサルティングしているメンバーが書いた本です。バリュー・プロフィット・チェーン―顧客・従業員満足を「利益」と連鎖させる(2004/12ジェームス・L. ヘスケット, レオナード・A. シュレシンジャー, W.アール サッサー)などに出てくる研究もこのような高度な解析が行われています。今では世界的にブランド戦略の大家となられたデービット・A・アーカー氏も私が20代のころお会いし社員の交換留学の話が出たころマーケティング会社を経営されておりマーケティング・リサーチ分析をされていたのでブランド分析に長けておられ、名著が生まれているのです。
このような高レベルなビジネスの世界での分析でなくても、日常のビジネス・データの分析でも、「仮説」がしっかりしていれば役に立つ分析結果が導き出せます。
「ここに問題があるだろう」「こういう分析をすれば問題がはっきりするだろう」という問題仮説、「おそらくこれ・これらが原因だろう」「こういう分析をすれば原因が分かるだろう」という原因仮説、「この施策が有効だろう・支持されるだろう」「こういう分析をすれば効果的な施策を発見できるだろう」といった対策仮説などが的確でなければなりません。

私は日本マーケティング研究所の竹山元一氏が社長をされていたエム・シー・プログラムで質的調査から事業計画・マーケティング施策のご提案をする仕事も20代のころさせていただいていました。先行事例研究や競合企業調査・流通関与者等々へデプス・インタビューを実施し、分析・解釈し提案書を作成する業務です。師匠の竹山からオープンデータや事前ヒアリングなどから「仮説をしっかり組んでやれ!」と叩き込まれました。
20代半ばから多角経営されていた上場企業の各事業部の事業部長様の作成された事業戦略書・計画書に触れ、それを実現していくためのマーケティング施策の検討に参画させていただき、展開実施に関わらせても頂き経験を積みました。「仮説をしっかり組んでやれ!」「結果を出せるよう仮説を検証し修正して新たな取り組みをしろ!」師匠の竹山から徹底して教え込まれました。
当時の日本マーケティング研究所(JMR)は利益相反しないよう1業種1社のクライアントという原則をとっていましたがグループ会社がいくつかあり、秘密保持を徹底しながらも各グループ会社の調査レポート・提案書などグループ本社のJMRが管理保管し手続きをすればそれらを閲覧することができました。
オープンデータは竹山が関連業界の紙誌を切り抜きストックする専門スタッフを置いて収集してくれていたので膨大にありました。いろいろ仮説を組むための情報がグループ内にあり大変役立ちました。特に先輩や仲間が担当しているクライアントの事業に長期に携わり、事業展開の質的検証(質的帰納)がされた役立つケースが豊富にあったことは非常に仮説を組む能力開発に役立ったと思います。1980年代のことですから今のようなネット情報社会ではなく、オープンデータを集めるのも大変でした。
顧客と逃げ客の調査データなども豊富にあり量的検証(量的帰納)の役立つケースも豊富にありました。量的検証では1980年代前半からPCを電話回線で大型コンピュータに繋いで高度な多変量解析を実施する環境も与えてもらい、当時から高度な量的検証(量的帰納)を実務で学ばせてもらいました。

【アブダクション―仮説と発見の論理】の活用すべき部分の要約です。(一部私の解釈があるかもしれませんが)
アブダクションは観察されたデータを説明するための仮説を形成する推論です。
アブダクションは最初に色々な仮説を思いつく示唆的(洞察的)段階と、それらの仮説について検討しその中から最も正しいと思われる仮説を選ぶ(あるいはその仮説のほかにもっと適切な仮説がないかどうかを考える)熟考的な推論の段階から成り立っています。

第一段階は、探索中の問題の現象について考えられうる説明をあれこれ推測し、考えられうる諸仮説を数多く出していきます。そして洞察(閃き)が働くのは主にその第一段階においてです。アブダクションの「飛躍」:仮説的飛躍(abductive leap)は、「われわれが直接観察したものとは違う種類の何ものか、そしてわれわれにとってしばしば直接には観察不可能な何ものかを仮定する」創造的想像力による推測の飛躍です。この創造的想像力による推測の飛躍によって、ある意味意外な事実が観察されると、直接観察したものとは違う種類の何ものか、直接には観察不可能な何ものかを仮定して、何が起こり得るかを仮説として発案するのです。

第二段階は、それらの思いが浮かぶ諸仮説にのりストの中から、十分熟慮して、もっとも正しいと思われる仮説を選び選択します。仮説を選ぶということは、ある仮説が実験的テストにかけるに値するものかどうかを検討し、実験的テストにかけるのに優先すべき仮設を暫定的に採択するということです。
その選ぶ基準は次の4つです。
1)もっともらしさ(plausibility):仮説は検討中の問題の現象についてもっともらしい、最も理にかなった説明を与えるものでなくてはならない。
2)検証可能性(verifiability):仮説は実験的に検証可能でなくてはならない。
3)単純性(simplicity):同じ程度の説明力を有するいくつかの仮説があるとすると、より単純な仮説を選ばなくてはならない。
4)経済性(economy):実験的にテストするのに費用や時間や思考やエネルギーが節約できる仮説を選ばなくてはならない(単純な仮説ほどこの経済性が高い傾向がありますが、必ずそうだという保証はありません)。
アブダクションの推論の形式は、たんなる思いつきの推論ではなく、ある明確な理由または根拠つまり「そのように考えるべき理由がある」、「そのように考えるのが最も理にかなっている」、「そのように考えざるを得ない」と言うふうに納得ができる合理的な理由または根拠にもとづいて、仮説を形成していきます。推測によって試行錯誤的に仮説を考え出さなければならないので、意識的に熟考的で自己修正的であるようにし、十分納得のいくもっとも理にかなった推測に到達するまで熟考に熟考を重ねなくてはならないのです。

質的帰納は、仮説を実験的にテストし検証する方法です。
科学的研究において他の種類の帰納のどれよりも一般的に有用なものです。
質的帰納は、探究者はまず発案された仮説から出発して、仮説の予測の通りのことが実際に起こるかどうか、それらの予測はどれだけ観察事実と一致するかを確かめる。そしてその結果、探究者はその仮説は正しいと言えるか、あるいは何らかの修正が必要か、それとも全く否定すべきかを判定します。
質的帰納には仮説を実験的にテストするという実証的機能のほかに自己修正的な性質があります。
質的帰納は、仮説を実験的に検証する際に「その仮説は立証されたと言えるのかどうか、あるいは立証に近づきつつあるのか、あるいはこれ以上注目するに値しないものなのか、あるいは新しい実験に照らして明確な修正が加えられ帰納的に最初からやり直さなくてはならないものなのか、あるいは真ではないけれどもしかしたぶんいくらかは真らしいところがあってこれまで進めてきた帰納をさらに続けていけばその結果よりよい仮説にいたるのに役立つようなものかどうか」を決定します。このように質的帰納は自己規制(self-regulating)・自己修正的(self-corrective)な過程でもあります。だから質的帰納を長期にわたって使い続けていけば、その長い過程のうちには帰納はそれ自体のあらゆる誤りを正しつつ、われわれを徐々に真理へと導いてくれるものです。
このようなことから質的帰納は経験から学ぶ方法だといえます。
質的帰納は本質的に自己修正的であるということが、質的帰納が正しい方法であるということを保証し、質的帰納法を正当化するのです。

アブダクションが行う観察は、説明を要する事実を仮説や理論を発案するいわば発想のための観察です。
質的帰納が行う観察は、仮説や理論の確証ないし反証を行うための実験的実証的観察です。
科学的方法には質的帰納法のほかに仮説の提案が必要であり、仮説の提案なしには質的帰納法を正しく用いることはできません。
探究は仮説によって導かれ、事実は仮説にもとづいて集められます。
事実とは事実としての意味を持つもののことであり、事実を集めるということはわれわれの関心や目的や考えにとって意味をもつ事実が選ばれ集められるということです。
事実とは単なる出来事ではなく、意味を持つ出来事であり、事実としての価値をもつ事象なのです。
ある事象が事実としての意味または価値をもつものとなるのは、われわれがその事象に着目しその事象のうち事実としての意味または価値を読み取るからであり、われわれがそれを必要かつ重要な事実として解釈し選択するからです。探究者の考えや仮説にもとづいて事実に意味を付与するのです。

【結論】
仮説を正しく用いると、問題解決や新規事業の推進など、さまざまな場面で強力なパワーを発揮しますし、ビジネスの精度やスピードもどんどん上がっていきます。
私は今「アブダクションによる仮説立案と質的帰納」がビジネスの生産性を高めるキーワードではないかと考えています。

近い将来AI(artificial intelligence:人工知能)によって仮説立案で人間を補助するようになるでしょう。しかしAIは最善の仮説をいきなり提案してくるでしょう。仮説の実行可能性についても判断しだしてくるでしょうが、なぜその仮説なのかについては、膨大な教師データと複雑な機械学習・ディープラーニングによって導き出すので、私達に理解できるような説明は付けられません。
AIには創造性はないですが、人間以上に高速で疲れることなく熟考的で自己修正的に思考(データ処理)し、自己成長し、少々優秀な人であっても考え出させないような仮説も出してくるでしょう。
このときの問題は、その仮説を使う人間でしょう。
出された仮説を使うには、ある明確な理由または根拠つまり「そのように考えるべき理由がある」、「そのように考えるのが最も理にかなっている」、「そのように考えざるを得ない」と言うふうに納得ができる合理的な理由または根拠を考え出さなければならない。

エフェクチュエーションもブルーオーシャン戦略も、尤度(ゆうど:もっともらしい)が高く・実践検証可能性が高く・明快さ分かりやすい(シンプル)・経済的な(受容可能な損失の範囲内)ビジネス仮説がなければはじまらない。
KJ法的アプローチではなく、豊富なビジネスケース・リソースから、意外な事実を注意して選び出し、創造的想像力によって、違う領域の事実も推測の飛躍によって私・私の仲間やステークホルダーを仮定して、何が起こり得るかをビジネス仮説として数多く発案できる環境を整えることが必要です。
社内ケースのビジネス仮説と質的検証を記録に残していく、業界・業種・業態に関係なく意外な事実を見つけ出し想定仮説と意外な事実としてケースをストックして行く。意外な事実は、実際に関係者に仮説を持ってインタビューし、想定仮説がマッチするのかどうかを確かめることは非常に重要でしょう。
エフェクチュエーションもブルーオーシャン戦略も、欧米のビジネス・スクールではケースを大切にし、そこからビジネス仮説を発想するカリキュラムが展開されているのだと思います。また、おそらく意識的に熟考的で自己修正的であるようにし、十分納得のいくもっとも理にかなった推測に到達するまで熟考に熟考を重ねるようカリキュラムの中で求めていることでしょう。

経営やマーケティングがプラグマティズムにもとづくなら、ビジネス仮説を発想する環境を如何に作り、実際の事業活動の中で尤度・実践検証可能性・分かりやすさ・経済性など熟考し検証に値する仮説を選び、ビジネス仮説の質的検証をさせ、ビジネスの現場で実践しながら如何に人・組織を育成して行くかが重要なテーマとなるでしょう。

今年、私はネスレ日本株式会社のCMO石橋様と日本マーケティング学界でお会いし感銘を受けました。KitKat・バリスタ・アンバサダーなどの成功例を発表されるマネージャーの方々とCMOの接し方や、CMOが直接ご発表になる社内で実施されている「イノベーション・アワード」などなから、ビジネス仮説の発案と検証による人と組織を育てるマーケティング、一つのあるべき姿を見せていただきました。
石橋様とお会いしていなければ私は、エフェクチュエーションとブルーオーシャン戦略を活用するコンサルどまりでした。これから現場で如何に人・組織を育てるお手伝いができるのか、考えながら実践してみます。

株式会社MCプロジェクト 坊池敏哉

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日本語訳のデータ・ドリブン・マーケティング 老マーケ屋の私に勇気を与えてくれた!

5月の連休、購入していたこの本を一気に読み切りました。

ここ4~5年、エフェクチュエーションの次に私自身がクライアント企業で取り組んできた内容なので非常に勇気を得ました。と言っても2014年原書を買って読み切ったわけではなく挫折しました。2章まで読んで3章で指標は少し違ってもやろうとしていることは間違っていない、マーケティング部がない年商300億円規模の中堅中小企業(自社ブランド商品も持つ卸売業)で実態に合った指標とシステムでやり抜こうと決心できたので、それで良しとしてしまいました(笑

今年4月下旬に出たばかりのホヤホヤです! 訳者よりも日本マーケティング学会の内田和成教授(早稲田大学ビジネススクール教授)の推薦の帯もあり、即買いました。エフェクチュエーションの対極のように言われるコーゼンションの世界かもしれませんが一定の事業規模になった事業領域では必要なものです。本の15の指標については全てが新しいものではありません、1990年ごろから米国で実戦投入された理論などに関する指標も多いです。1990年ごろからの顧客満足そしてバリュー・プロフィット・チェーン、カスタマー・バリューなどの理論や書籍に触れ、さらにNetの時代への対応に取り組んできた人にとっては当たり前のことばかりに思えるでしょう。でもこれらは日本の経営の現場ではポーターの競争の戦略やコトラーのマーケティング・マネジメントに比べ十分に活用はされてはいません。

エフェクチュエーションもまだ日本では定着していない、データ・ドリブン・マーケティングもこれからです。ただこの2冊は老マーケ屋が最後に実践しようとモガイテいるテーマで、勇気を与えてくれた書籍です。

データ・ドリブン・マーケティングはクライアント企業でまだ私はもがいています。体も気力も60歳前の老マーケ屋にはキツイ・・・・エフェクチュエーションの行動論理もベースに持ちながら、クライアント企業でのデータ・ドリブン・マーケティングのステップアップを継続して進めていく勇気をこの本からもらいました。

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メチャクチャ気持ちいい気付きが得られる研究会でした

日本マーケティング学会第3回<マーケティングと新市場創造研究報告会>
ネスレ日本株式会社神戸本社で以下の方のご講演、私は非常に感銘を受けました。
最初の講演者の方は、ネスレ日本株式会社チーフ・マーケティング・オフィサー(専務執行役員)で日本マーケティング学会常任理事の石橋昌文氏の短い講演でしたが、人事総務など全社各部門に横串を指す形のマーケティング展開の図が示されていました。そしてその説明もお聞きしました。
あとで名刺をいただきましたが「チーフ・マーケティング・オフィサー」とカタカナで書かれた肩書の名刺を私は初めていただきました。
人事総務など全社各部門に横串を指す形のマーケティング展開の図は、書くのは簡単ですが、専務執行役員が徹底して実践しておられるのが、その後のお二人のご講演内容と、講演前後に講演される方と専務とのちょっとした会話や態度でよく分かりました。

「ネスカフェアンバサダーの事例紹介」(14:10 -14:55)
ネスレ日本株式会社 Eコマース本部 部長 津田匡保氏
「キットカットショコラトリーの事例紹介」(15:10 – 15:55)
ネスレ日本株式会社 コンフェクショナリー事業本部
マーケティング部 部長 槇亮次氏

お二人とも講演の冒頭はチーフ・マーケティング・オフィサーの石橋氏と重なる「ネスレのアイデンティティー」のような部分を用意されていました。
東京にも本社がありますが、津田匡保氏は東京から戻ってすぐの講演でした。津田氏は石橋氏と同内容のページを示されたりもしていましたが・・・・でもその時のお二人の表情が私には「いいな~」と思えました。(私は師匠の竹山さんのところに年に数回遊びに伺いますが、長いこと一緒に仕事の話をしていないな~・・・・ちと寂しい。)
15分の休憩を挟んで、槇亮次氏の講演前はチーフ・マーケティング・オフィサーの石橋氏と簡単に打ち合わせをしておられました。
槇亮次氏の講演の中の説明で、ネスレでのマーケティングとは、≪マーケティング≠マネジメント、マーケティング=経営≫と示されていました。
ネスレ日本にとってマーケティングが経営そのものなのですね。
CMOではなく「チーフ・マーケティング・オフィサー」の石橋氏の存在が非常に重要なのだろうなと私は思いました。

私は、日本マーケティング研究所に入りたての1982年頃の社内研修で当時のネスレ日本のマーケティング部長の講義を受けたことがあります。
やっぱり外資系のマーケティングは本格的だなと驚き、その何年か後(1985年ごろ)に米国に研修に行ったときに各社のマーケティング責任者の方々からプレゼンを受けた時にも同じように感じました。米国研修は、今では世界的ブランド戦略の権威のデービット・A・アーカー氏がセットして下さっていました。米国研修最終日にサンフランシスコのホテルで、日本マーケティング研究所の森茂樹社長と柳沢健氏(後に顧客満足経営の書籍翻訳されました)と私がデービット・A・アーカー氏とじっくり意見交換させていただく機会を得ました。カスタマー・リレーションシップの構築にアイデンティティーの重要性をデービット・A・アーカー氏からお聞きしたのを強烈に覚えています。その場にはアーカー氏の会社の日系女性社員のたしかSUGIYAMAさんが同席していて、彼女と私を交換留学させないかとのご提案をいただいたりしたので余計強烈に覚えています。
後のブランド戦略論の中でも「アイデンティティー」の重要性を述べられています。

津田匡保氏の「ネスカフェアンバサダーの事例紹介」で「アイデンティティー」を非常に強く感じました。あまり知られていない、「ネスカフェアンバサダー」の展開をする元になったお話をしてくださいました。
「バリスタ」を商品化しヒットした後、2011年東日本大震災の時に神戸出身の津田匡保氏が被災地の仮設住宅を「バリスタ」を持って回り暖かいコーヒーを飲んでいただく活動をしていたそうです。イベントのある時は仮設住宅の方も集まり交流を持つことがあるが、普段交流を持つ場もないという話を聞き、バリスタとコーヒーを仮設住宅に提供しコーヒーを飲む場を作られると、自然と人が集まり話したり交流がうまれるようになったそうです。
コーヒーの家庭での需要が減少する市場環境に対して、ネスレが取り込めていなかった家庭外でのコーヒー需要を取り込む事業展開を考える中で、東北での経験が生かされました。
そして、オフィス市場の開拓を、「バリスタ」を無償提供し「コーヒー」を安価に直接提供する「ネスカフェアンバサダー」で成功させておられます。
このビジネス・モデルの根幹には「あなたの職場に、笑顔とくつろぎの場所を!」という「ネスカフェアンバサダー」が提供するオフィス環境づくりのサービスがあります。津田匡保氏が2011年東日本大震災の時に仮設住宅でコーヒーを囲んで仮設住宅の人たちが交流した経験がサービスの基本にあります。顧客の課題解決(ソリューション)を大切にするネスレ日本のアイデンティティがあり、単に職場にコーヒーを提供するビジネスではなく、コーヒーを囲んで職場に笑顔とくつろぎの場所を提供するサービスとしてのビジネスに仕上げられ、さらにその奥にビジネス推進者の震災の時の経験というアイデンティティーがあります。
津田匡保氏は何万人ものアンバサダーになっておられる方と直接会われています。また、神戸本社にはグループ・インタビュー・ルームも持っておられます。
スーパーマーケットがEDLP(毎日が低下価格)になり、以前の営業活動のように特売エンド大量陳列をして回ることも減り、600人近くいた営業を400人に削減し、その営業の方々をネスカフェアンバサダーのデモンストレーション営業に振り向けられたようにもうかがいました。
コーヒーを囲んで職場に笑顔とくつろぎの場所を提供するサービスの価値を広める活動を通じて、営業改革も加速されているのではないかと私は思いました。

また、Eコマース本部 部長 津田匡保氏のネスカフェアンバサダーは、市場の境界の引き直しとメリハリ・高い独自性・訴求力のある戦略キャンパスができているブルーオーシャン戦略の例としても予測不可能な新市場・新商品(サービス)の社内起業のエフェクチュエーションの例としても非常に優れているのではないかと個人的には思えて仕方ありません。また、会社のネスカフェというブランドの新しいヒストリーの一ページを綴るようなブランド・アイデンティティーになれば最高にいいなと思いました。そんな可能性があるからこそ、ローカル(ネスレ日本)からグローバルへ向かうイノベーションなのでしょうね。チーフ・マーケティング・オフィサーの石橋氏がいらっしゃったからこそ社内起業のようなネスカフェアンバサダーが3年で28万人と事業としても育ち世界のネスレに広まっていくのでしょうね。この事例は世界的に通用する経営戦略論のブルーオーシャン戦略・ブランド戦略、そして市場創造の行動論理のエフェクチュエーションで論理武装しプレゼンテーションすれば、グローバル(世界企業)な経営(Business Administration)に日本人が参画できる事例になるのではないかと思えてしまいます。私はマーケティングや経営を研究する人ではありません、今日の研究会はエフェクチュエーションの関係のものではありませんがその研究の関係者の方は非常に少なかったですね。私は津田さんとは時間もなく名刺交換できませんでした、残念!

チーフ・マーケティング・オフィサーの役割と、マーケティング=経営、アイデンティティー、忘れられないほどに深く感動し、心に刻みつけるものとなりました。こんなマーケティング・リテラシーの高い会社・組織があるんだ~・・・・素直に感激しました。チーフ・マーケティング・オフィサーの石橋氏の能力レベルになくクライアント企業内での権限もない私ですが、顧問をしているクライアント企業が少しでもこんな会社に近づけるようお手伝い頑張らねば!
3月28日にツタヤ・ネスレの社長様と石井会長の学会関係のイベントがあるとの告知もいただきました。楽しみにしています、がその頃にクライアントの重要なビジネス・イベントの日程と微妙に重なりそうで・・・・。

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精神論ではない過剰労働ではない自己コントロール

同一労働・同一賃金、残業規制、それは与えられた労働環境でのお話です。

エフェクチュエーションの論理で、環境にも働きかけコントロールしようとする自立した人は、自己投資のためのチャレンジする仕事をします。労働環境をもコントロールできる権限を手に入れるためにチャレンジします、仲間と共同や切磋琢磨もします。精神論ではなく報われないなら・精神的に追い詰められたり・健康維持ができなくなるようなら、自ら辞める・新しい所で活躍する決断をしなければなりません。でなければ健康を害したり・精神的に追い詰められ自ら命を絶つことにもつながりかねません。

週1~2回、1時間から2時間新しい取り組みにチャレンジするために早く出勤したり・残業したところで、月間20時間以下です。大手広告会社のような会社のための異常なサービス残業ではなく、辞めても再就職できる・自分で事業を起こすことができる、そのための自己投資・それが今いる組織にとっても有益なら手当をもらってやってもいいじゃない!

そんなことを言っている私は20代後半に、働きすぎ・ストレスで数日で目が見えなくなるような急性の原田病になってしまいました。尊敬するマーケティングの師匠(私を育ててくださった竹山社長)に退職させていただくお願いをしました。その後コンサル会社に再就職し、またそこの社長にお願いをし、独立させていただきました。

自らの命を絶つようなことをするな!、健康を害してしまうようなことをするな!・・・・それならば辞めてもいい、ただ後ろ足で砂をかけるような辞め方はするな!、その後に活かして成長しろ!、成長できているのもその会社・組織・師匠や先輩のおかげですと報告できるような活躍をしろ!

マーケティングにおける市場環境も、働く者の労働環境も、所与のものではなく自らが変えることができるもの・コントロールできるものとして、受容できるリスクの範囲で主体的にチャレンジしよう。自分自身が健康を害してしまうような働き方をしてしまった、職場の先輩や後輩が自らの命を絶ってしまうような経験をした。だからあえて申し上げます、「環境に働きかけコントロールしようとする自立した人になるために、自己投資のためのチャレンジする仕事をしよう!」、私はそんな仲間と仕事をいっしょにしたい!・・・・江副イズムのリクルートが多くの優秀な起業家を輩出しておられます。リクルート事件という不祥事もありましたが自立した起業家を輩出するリクルート社を私はリスペクトしています。

私の息子にもそうあってほしいと話しています。主体的に許容できるリスクなら敢えてとっていいとも話しています、息子は少しは分かってくれていると思います。私の仕事でかかわる人たちにもそうあってほしいとも思っています・そんな話もしています。・・・・なんで分かってくれないという愚痴かもしれません。

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許容せざるを得ない・できるレベルへのリスク低減を現場がしたのが豊洲なのではないか?

豊洲に何故地下水浄化施設があるのか、なぜ地下空間があるのか・・・・行政技術者のリスクテイク?

地下にある有害物質が地下水に溶け出すことは豊洲でなくても、何処の産廃処理場でもこのリスクは承知の上で浄化施設を整備しているはずです。
豊洲になぜ地下水浄化施設が今あるのか?
産廃処理場並に有害物質が地下水に溶け出すのを想定していた行政の技術者がいたからではないのか?
もしもの時に最悪掘り返すことが必要になったら困るので、地下空間と重機搬入口を作ったのも、最悪を想定していた行政の技術者がいたからではないのか?

産廃行政に携わっている方なら、最悪でも重機を搬入して掘り返すとかえって有害物質を掘り出すことになるので、きっちり防水処理をしてコンクリート等で出てこないように蓋をする。
そして地下水をくみ出し浄化して排水する。有害物質は産廃処理を確実にして処分する。
ゴミ焼却施設からも有害物質が含まれる廃棄物が出ているのは周知の事実でしょう、それでも可能な限りの最高水準の技術で処分されていることだから行政上容認されているでしょう。建屋の通常の建設で盛り土をしてその上に施工する基礎(ベタ基礎)を徹底して防水処理するでしょうか?しそうにないから本当は掘り返す重機を入れるためではなく、地下空間を設け徹底した防水処理し有害物質を建屋から遮断する工事ができるようにしたのではないでしょうか。

豊洲の地下を防水処理し頑丈な構造で蓋をして、地下水をキチンと汲み出し浄化して排水し、有害物質は最高水準の処理技術で処理し廃棄物処分するので大丈夫ですと、言い切る専門家がいなければならないでしょう。
それでも地下水を浄化しきる前に、3.11の東日本大震災のような地震・1.17阪神淡路大震災のような地震があれば地盤が液状化し有害物質が吹き出すでしょう。
しかしそれでも地下水を浄化しないまま、豊洲市場ではない活用をして大地震が来たら有害物質は液状化で吹き出すリスクを放置したままになり、このリスクを回避するには地下を防水処理し頑丈な構造で蓋をして、地下水をキチンと汲み出し浄化して排水し、有害物質は最高水準の処理技術で処理し廃棄物処分することが不可欠でしょう。

こんな基準値を超えるなんて・・・・ブットボケないでよね!
許容しなければならない・あるいは出来るリスクに対策できているかどうかが重要な判断基準でしょう。
豊洲市場でなかったらここまで浄化施を設作らなかっただろう。隣の国みたいに危険な化学物質の爆発火災があった危険な土壌の上に公園にしてしまうようなことをしないで、豊洲市場にしたからこそより安全を確保できるのではないでしょうか。
議会や行政トップ・専門家と言われる方々がブットボケそうだから、許容してもらうしかないレベルにリスクを低減するために行政技術者がリスクテイクして対処したのではないか?
最悪ともいえる土壌汚染の土地を、最高の技術で対処している・・・・そう信じさせてくれる言質が欲しいですね。
それとも議会や行政トップ・専門家と言われる方々の不作為で、大震災の液状化で豊洲の地から有害物質が噴出するのを「想定外のことでした」と言うのを繰り返させる機会を残していいのか?いいはずないだろう!

これは正論ではなく、現実に今存在してしまっているリスクを直視したら思い至ってしまった現場のプロフェッショナルであるよう心がけるマーケ屋・職人の深読みしすぎる暴論でしょう。

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人工知能、artificial intelligence:AI、Deep Learningとマーケティングや経営・・・・まだ分からないからオモシロイ!

60歳も近い老いたマーケ屋の私、“Business Development”ができる「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」を目指して、Effectuation: Elements of Entrepreneurial Expertiseの次に挑もうとしているのはこれです。

私が人工知能というテーマにはじめて出会ったのが1981年に、関西大学社会学部で心理学を学んでいたころ、当時NECのPC8001が100万円もしていたころ(父親が行政でPCが使われる時代が来ると個人で買って使いっていました)、当時の大学講師の方が東大だかの人工知能の研究に移るという話を伺った時でした。

 

1982年に日本マーケティング研究所に入りエム・シー・プログラムと言うグループ会社に配属され、1985年ごろ積水化学工業のMBA資格を持つ方が新事業のマーケティング戦略を立案するのにコホート分析を使って消費者研究をしろというようなオファーがあり、若い少し統計が分かりPCが使える私が抜擢されました。当時高価なPCを買ってもらい、計算センターと契約して外部のスパコンとモデムで通信しながら心理学的アプローチからの多変量解析を用いた消費者研究とマーケティング戦略立案をさせていただきました。その少し前松下電器産業の無線研究所からお仕事を頂き、コンピューターやその周辺技術が将来(10年から30年先に)どの様な需要・ニーズを喚起するかを予測するリサーチを手がけさせていただきました。

35年近くPCを仕事に活用してきましたが、人工知能とは無縁でした。数千万行から1億行のビッグデータを解析するデータ・サイエンティストの仕事も自らこなし、その分析結果から経営戦略・マーケティング戦略やその展開まで経営の現場で今もしていますが、人工知能・artificial intelligence:AI・Deep Learningには足を踏み入れていませんでした。60歳も近い老いたマーケ屋がいまさら関わるのは「身の程知らず」と思っていました。

 

最新とはいえませんが、ワークステーションが事務所に持っています。オーバークロックしたPCも自作し併用して仕事に使ったりもしています。最近はEffectuationやブルー・オーシャン戦略を活用した新規事業開発への挑戦をし、データ・サイエンティストとしての業務もこなしてきました。60歳も近い老いたマーケ屋ではあっても、人工知能・artificial intelligence:AI・Deep Learningは「身の程知らず」か?・・・・最後の挑戦、挫折するかもしれませんがマーケティングや経営への人工知能の活用を研究してみようとしています。今は研究と言うよりも、これまで使っていなかったAIに使うプログラミング言語の習得とDeep Learningの理論と実装の勉強を始めたばかりです。

人工知能のライブラリーやツールを使えばいいのですが、ブラック・ボックスを使うようなものになってしまいそうで、マーケティングや経営を実践の場を通して学んできたように、人工知能・Deep Learningを自ら実装するところから老いてはいますがやろうとしています。

 

Effectuationやブルー・オーシャン戦略で気になったのが、いかに経験知だけでなく組織としての暗黙知を積見上げるスピード・精度を上げるか?

人工知能・Deep Learningはその技術として大変有望だと思います、しかし人工知能・Deep Learningが成熟した時、人工知能・Deep Learningが積み上げた経験知・暗黙知と違う判断・一手が導き出せる「ヒト」「ホモ・サピエンス(賢い人間)」に今の私は関心を寄せています。

将来は、「ヒト」「ホモ・サピエンス(賢い人間)」が人工知能・Deep Learningを使いこなすような時代であってほしい。私はマーケティングや経営の研究者でもなければ学者でもない、マーケ屋という「ヒト」「職人」であり、マーケ屋としての「ホモ・サピエンス」に少しでも進化していきたい。

オモシロソウダカラ ヤッテミル!

artificial intelligence:AI、アートとは「人工的」なものであり、インテリジェンスとは「知能,理解力,思考力」であり、AIを使いこなせる「ホモ・サピエンス(賢い人間)」が作り出さなければAIじゃないのかもしれない!マーケ屋としての「ホモ・サピエンス」に少しでも進化していきたい。

 

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エフェクチュエーションの「手中の鳥の原則」とブルーオーシャン戦略

ビジネス・デベロップにおける、マーケティングの活用について、エフェクチュエーションの手中の鳥の原則の何からスタートするかは、「ブルー・オーシャン戦略」の前半の部分が役に立つと思います。

経営戦略として全社的に取り組む部分を別にすると、ブルー・オーシャン戦略の中核は、コストを押し下げながら、買い手にとっての価値を高める状態の、バリュー・イノベーションを探し出せということに尽きます。ブルー・オーシャン戦略の書籍では下図のようにあらわされています。

ブルーオーシャン戦略:バリューイノベーション

ブルーオーシャン戦略:バリューイノベーション

第1部ブルー・オーシャン戦略とは 第1章ブルー・オーシャン戦略を生み出す バリュー・イノベーション:ブルー・オーシャン戦略の土台 P62

 

コストを押し下げながら、買い手にとっての価値を高める状態の、バリュー・イノベーションを探し出す分析のためのツールは次のようなものです。

ブルー・オーシャン戦略で「戦略キャンパス」の柱をなす競争の要因ごとのパフォーマンスを表す「価値曲線」を描き、4つのアクションによって既存業界・競争企業と明確に違う競争の要因を追加したり思い切った強化で違いを明確にし、取り除いたり減らしてコスト競争力を高める自社の価値曲線を描くことを求めています。

戦略キャンパス・価値曲線については、以下のような例が上げられています。

「第1部ブルー・オーシャン戦略とは」「第2章分析のためのツールとフレームワーク 戦略キャンパス P73」で取り上げているのが、オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズのカセラ・ワインズが2001年6月に出した「イエローテイル」というブランドのワインです。その戦略キャンパス(価値曲線)は次のようなものです。

ブルーオーシャン戦略:戦略キャンパス・価値曲線

ブルーオーシャン戦略:戦略キャンパス・価値曲線

図の出展:第1部ブルー・オーシャン戦略とは 第2章分析のためのツールとフレームワーク 4つのアクション P81

 

「4つのアクション」によって、「誰もが気軽に楽しんで飲めることを目的に造られたワインであり、その戦略は同業他社と争って顧客を奪い取るのではなく、従来からビールやカクテルに親しみ愛飲していた人々をワイン市場へと引き込み、新たな客層を開拓する」価値曲線を引きました。

カセラ・ワインズは本来ワインの特徴となるべき「タンニンの抽出やワイン熟成」といった要素を取り除き低コスト化を図り、「渋味の刺激が穏やかな低タンニン、残糖が1L中8~10gの普通のワインより甘くやさしい酸味で果実味が豊か」なのを重視しました。イエローテイルをワインではなく「ビールやカクテル」のように手軽に買ってすぐ飲み切るタイプのお酒のポジショニングに仕上げたのでした。私はオーストラリアのことは全く分かりませんが、米国のホームパーティーはBBQなどフレンドリーなもので、欧州のワインの食文化とは違いビールやカクテルでワイワイやるスタイルで、ワインではなくこのポジショニングにイエローテイルがあると個人的な体験から理解しています、だから日本ではたいして流行らなかったのでしょう。オーストラリアに生息する特に可愛らしいと評判のロックワラビーの“黄色い足”にちなんで命名された「イエローテイル」は発売後、わずか2年足らずでアメリカ市場を席捲し、輸入ワインNo.1の座を射止めてしまいました。

ブルーオーシャン戦略:4つのアクション

ブルーオーシャン戦略:4つのアクション

ブルーオーシャン戦略:4つのアクションの例

ブルーオーシャン戦略:4つのアクションの例

図の出展:第1部ブルー・オーシャン戦略とは 第2章分析のためのツールとフレームワーク アクション・マトリクス P85・86

 

「戦略キャンパス」の「価値曲線」は、アクションマトリクスの結果から表わされますが、ポジショニングが分かりやすい。どのような価値曲線がいいのかを判断する視点としてブルー・オーシャン戦略の本では次のように述べられています。

 

戦略キャンパスを土台にして戦略策定プロセスを築いていくと、企業とその経営者、マネージャーは、「森」すなわち全体像に注意を向けられる。戦略キャンパスを作成する効用は3つある。

  • 業界の戦略プロフィールが一目瞭然である。
  • 競合他社(潜在的競争相手も含む)の戦略プロフィール(何に力を入れているか)が分かる。
  • 自社の戦略プロフィール・価値曲線を通して、現在何に力点を置いているか・将来は何に力点を移すべきかが明らかになる。

ブルー・オーシャン戦略は、

  • メリハリ
  • 独自性
  • 訴求力のあるキャッチフレーズ

という、互いに補完関係にある3つの特徴を持った大きな可能性を持ったブルー・オーシャン戦略を描くことが必要である。戦略プロフィールがこのような特徴を強く持たない場合は、その戦略は混乱し、他社と差別化できず、コミュニケーションしにくいだろう。その上実行には大きなコストがかかるだろう。

第Ⅱ部ブルー・オーシャン戦略を策定する 第4章細かい数字は忘れ、森を見る 森を見る P141

 

一般的なマーケティング戦略等のポジショニングでは、2軸の「田の字チャート」を用いキチンとした数値でプロットして求めようとします。しかし、「戦略キャンパス」の「価値曲線」は多次元空間で構成されたポジショニングを平面の曲線に置き換え、「メリハリ」「独自性」「訴求力」があるかを視覚的に見せようとするものです。多次元空間の表現方法としてレーダーチャートもありますが、性能比較などで主に外に広がればよい性能を表すような使われ方をします。数学の多次元(3次元以上)の位相空間は、私たち一般の人間には分かりにくいものです。また精緻な消費者調査結果からクラスター分析を行うこともブランドのポジショニングなどでは行われますが「初期微動」は捕らえることは非常に難しいものです、また新市場・新製品のアイデアに繋がる情報をもたらすことも少ない。多次元空間のユークリッド距離などで近いものに無理やりクラスターにまとめられてしまいます。「価値曲線」では違いをはっきり出す軸を創造しなければなりません。「価値曲線」は単純なものに見えますが6種のアプローチで多次元的に一定レベルの仮説を持って質的情報を直接集め記録し、多次元の位相空間の中に「メリハリ」のある「独自」の「訴求力」のあるポジションを見つけ出すために情報を読み解き、そのポジションに立つために自社・我プロジェクトが実行可能な手段(means)体系までをも再考し、違いをはっきり出せる軸を創造して描けばインパクトのあるものが描けるでしょう。

 

では、どう描くのか? フレームワークは?

ブルー・オーシャン戦略では、調査会社に頼まず経営やプロジェクトのTOPが自分たちで、次の市場の境界を引き直すには6種類のアプローチでリサーチ会社などに頼まず直接調べて描けとしています。

ブルー・オーシャン戦略の第一原則は、市場の境界を引き直して競争を迂回し、ブルー・オーシャンを創造することとされています。

市場の境界を引き直すには6種類のアプローチがある。「6つのパス」

  • 代替産業に学ぶ
  • 業界内の他の戦略グループから学ぶ
  • 別の買い手グループに目を付ける
  • 補完財や補完サービスを見渡す
  • 機能思考と感性思考を切り替える
  • 将来を見渡す

詳細は、「ブルー・オーシャン戦略」の第Ⅱ部ブルー・オーシャン戦略を策定する 第3章市場の境界を引き直す を参照下さい。

 

なぜ直接自分たちで調べて描く必要があるのか?

まず自社と競合先の現在の価値曲線を描き、「いかに変えるべきか」の議論を始める前に現在の価値曲線を描き、今の自社に「メリハリ」「独自性」「訴求力のあるキャッチフレーズ」があるあるのかを明確にする。何より意志強固なリーダーの決断・抜き差しならない危機がなければならないからです。

そして、自分の目で現実を知る。現場に行き、自分の目と耳で直に、自社の製品やサービスがどのように使われているか・あるいは使われていないかを確かめる。真っ先に向かうべきは顧客のもとだろう。しかし、顧客以外の企業や個人をも訪問すべきである。顧客と実際の利用者が異なる場合、利用者にも訪問すべきであるとしています。

顧客や利用者にとって「戦略に魅力的なキャッチフレーズ」となるものを考えるのも、重要な課題であるからとも言っています。

 

ブルー・オーシャン戦略では、ここから先の部分は、全社的にブルー・オーシャン戦略を適応させようとしており、そのための内容になっています。

第4章細かい数字は忘れ、森を見る

ステップ3:ビジュアル・ストラテジーの見本市を開く

ステップ4:新戦略をビジュアル化する(全社レベルで戦略をビジュアル化する)戦略キャンパスを活用する&PMSマップを活用する(pioneer:パイオニアsetter:安住者migrator:移行者)

第5章:新たな需要を掘り起こす

第6章:正しい順序で戦略を考える

第7章:組織面のハードルを乗り越える

第8章:実行を見据えて戦略を立てる

第9章:価値、利益、人材についての提案を整合させる

第10章:ブルー・オーシャン戦略を刷新する

ブルー・オーシャン戦略で全社的に企業革新しようとするには、このような手順が必要だと思います。

 

経営TOPでなければなかなかそこまでできないし、経営TOPであってもブルー・オーシャン戦略で全社的に企業革新に踏み出せない各社事情があります。

“Business Development”ができる「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」を目指す私もそんな状況からのスタートです。クライアント中小企業における社長直轄の数名の小さな社内ベンチャーによる「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のスタートでは、ブルー・オーシャンを創造するための6種類のアプローチ「6つのパス」から、現在の利害関係者と今何ができるか(手段:Means)を明らかにして、クライアント企業の経営者がどこまで損失を許容されどう実行して行ってもよいのかのコミットメントを得て、経営者にプロジェクトの進行状況等の報告・相談を月に1~2回必ず行い、確実に成果を積み上げるよう「EFFECTUATION」の熟達した起業家の行動論理を参考に実践支援してきています。

抜き差しならない危機に直面してからでは遅すぎる。意志強固なリーダーであっても決断するには許容できるリスク・損失の範囲はある。

 

市場の境界を引き直す「6つのパス」、①代替産業に学ぶ、②業界内の他の戦略グループから学ぶ、③別の買い手グループに目を付ける、④補完財や補完サービスを見渡す、⑤機能思考と感性思考を切り替える、⑥将来を見渡す、これらを社長直轄の小さなプロジェクトを立ち上げてからやるのか、それとも立ち上げ前に行い経営者にプレゼンしてやるのか?

結論からいえば私どもの場合、”Business Development”の「6つのパス」は先行投資的に実施することがほとんどです。クライアント企業での経営やマーケティング関連の数値分析・マネージャークラスへのヒアリングなどを行い、現場の課題だけでなく何ができるか(means)・誰が協力してくれる可能性があるか・どこまでぐらいならやってもよさそうなのか、等ある程度把握します。クライアント企業の状況を把握した上で「6つのパス」を実施し、小さな今できそうな社内ベンチャー的「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」の種を見つけ出し、協力してくれそうなマネージャーとその仮説的な案を議論して相互作用が図れそうなら、経営者に提案しOKのコミットメントが得られればそこからがスタートです。「戦略キャンパス」を描くのを活用し仮説的なものとして近い将来企業成長に役立つ「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のアイデアとそれる実現する今やれる手段を創造し、リスクを最小にして最大の成果を出す小さくても「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のポジショニングを明確にしてトップ・マネジメントとinteractionを図り、コミットメントを得ることがスタートです。

そして「エフェクチュエーション」の動学モデルを活用し、エフェクチュエーションに基づくコミットメントを重ねて得られるようにして行くのです。

1.予測可能性ではなく、未来や外的環境のコントロール可能な側面を重視する。さらに、コントロール可能なものに転換できない予測可能な情報は避けられる。

2.それぞれのエフェクチュアルな行為者は、損失を許容できる範囲内でコミットする。目標利益や成果を達成するために必要だと予測されたものに対してコミットメントするのではない。

3.ネットワークの目的は、実際のコミットメントを行う人々によって、彼らの交渉によって決定される。予め決められた目的によって、誰が経営(ビジネスへの関与)に参加するのか決定される訳ではない。

4.ネットワークが拡大し、可能な「手段」が増加するに従って、「目的」はより多くの制約を受けることになる。

言い換えれば「人工物(市場)がどのようなものになるか」は、時間の経過とともに、関与者が欲するものが手に入ることが分かるに従って、次第に固まってくる。

5.このプロセスの鍵は、それが代替的な手段であれ目的であれ、代替的選択肢の中から選択することではなく、既存の現実を新しい代替案へと変容させることです。

(2009年S.D.サラスバシー エフェクツエーション 第5章 エフェクツエーションを理解する:エフェクチュアル・プロセスの動学 P144)

 

クライアント企業とのコンサルティング関係での信頼をベースにしますが、市場の境界を引き直す「6つのパス」、①代替産業に学ぶ、②業界内の他の戦略グループから学ぶ、③別の買い手グループに目を付ける、④補完財や補完サービスを見渡す、⑤機能思考と感性思考を切り替える、⑥将来を見渡す を、どこよりもクライアント企業のことを専門的に深く理解し、クライアント企業にとって良い結果が得られるまでトコトンお手伝いする「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」として行い、クライアント企業のmeansを引き出します。

私が30年近く昔にマーケティング・リサーチの会社でやっていたリサーチの中でも中間財・生産財の分野で「フィールド調査」と言われる非常に地味な分野です。統計学を使い分析するマーケティング調査とは異なり、クライアント企業のパートナーとしてクライアント企業の事業の現状を深く理解し、かつ常に競合企業や代替産業・関連周辺業界の情報を収集して置き、そこから必要な調査対象を抽出し、収集しておいた事前情報などからインタビュー項目と聞き取るべき内容のレベルを想定して、アポイントをとりデプス・インタビューし、戦略レポートにまとめクライアントに報告します。

当時との違いは戦略レポートで終わるのではなく、10年前に「ブルー・オーシャン戦略」が経営学の世界で提唱され「戦略キャンパス」の「価値曲線」でポジショニングとmeans(展開手段)を明確にするようになったところでしょう。しかし、これでクライアント企業において実践できるかというと、そうではありません。通常の大手企業なら事業計画書を求められますし中堅中小企業でも目標成果をどう設定するかを求められます。経営コンサルとしての立場から、エフェクチュエーションの動学モデルをベースに質的な戦略レポートで説明強化し小さなプロジェクトからスタートさせて行きます。

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需要創造するアイデアから新市場を紡ぎ出すための行動論理:エフェクチュエーションの活用の実際

起業家や経営者は、新しい市場の創造に取り組まなければなりません。場合によっては、既存事業を再成長または生き残らせることと同時並行に行う必要もあるでしょう。”Business Development”ができる「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」として2009年からの弊社のエフェクチュエーションの活用の実際の取り組みを振り返ることにいたしました。

因果関係を重視するこれまでの経営理論(コーゼーション)では、新しい市場(全ての可能な市場)はあらかじめ存在し探索的戦略を通じてその市場に参入するか、探索・活用のプロセスに従事する技術的・制度的進化の結果として市場が出現するとしていました。このように新しい市場は予測可能なものであるとするならば、その市場に対する経験知・経営資源など進出する企業の競争優位の状況によって市場占有率が決まってしまうでしょう。中長期的にも新しい市場を開拓し企業成長していくには「競争優位の戦略」が重要視されます。こうしたマネジメント(経営力)にたけている経営者が「プロの経営者」と呼ばれているのでしょう。

一方で、ベンチャー・キャピタルの投資判断は、「経営力」より「創造力」を重視しているようです。プロの経営者は「イノベーター」になりえないのか?・・・・「ほぼ不可能だ。」と言い切るところもあります。投資する企業の最高経営責任者(CEO)には経営の巧拙より、創造力が以前にも増して求められているようです。しかし、会社が大きくなれば経営力も問われてきます。伝統的なベンチャー・キャピタルは出資したベンチャー企業が大きくなると、トップを創業者からプロのCEOに代えてしまうことも多いようです。プロのCEOは創業者が生み出したイノベーションの果実の最大化が得意だからです。エグジット戦略として、事業を最大化して売却すればよいのでしょう。それではここでいう「創造力」は経営者の資質なのでしょうか、それとも論理にまとめられるものでしょうか?

 

ベンチャー・ビジネスを複数回成功させている経営者を研究し、熟達した起業家の論理としてまとめたのが、2009年S.D.サラスバシーの「エフェクチュエーション」です。

新しい市場の創造を達成するための実用的な手段を提供する論理(エフェクチュエーション)では、デザインするように新たらしい市場を紡ぎ出すことができるとしています。(2009年S.D.サラスバシー エフェクツエーション 第5章 エフェクツエーションを理解する:エフェクチュアル・プロセスの動学 P129)

エフェクチュエーションは、許容される失敗による損失リスクの範囲内で、実行可能な手段で市場創造するアイデアを、ステークホルダー(利害関係者)との相互作用によるコミットメント(委託する・責任を伴った約束・関わり合いを持つこと)を連鎖させていき、デザインするように新たらしい市場を紡ぎ出そうとする行動の論理です。

因果関係を重視するこれまでの経営理論では、欧米等ではベイズ推定やCPR(主成分回帰分析)など因果関係を分析する手法も経営に頻繁に活用されており、因果関係の分析結果を基に戦略が策定されています。日本では欧米ほど因果関係を分析する手法は経営の現場で使われていないように思います。

戦略の分野ではもう古典でしょうがM.Eポーター氏の「競争優位の戦略」やJ.L.ヘスケットW.E.サッサーL.A.シュレンシー氏のバリュー・プロフィット・チェーン、マーケティングの分野ではP.コトラー氏の「マーケティング・マネジメント」D.A.アーカー氏の「ブランド・エクイティ戦略」などなど専門書は多数あり、日本でも経営戦略は経営の現場でよく活用されています。マーケティング・戦略ツールとしての古典的な「STPの手法(セグメント⇒ターゲティング⇒ポジショニング)」もあります。ある程度市場が形成された既存事業の競争力強化や再成長には、非常に有用な理論です。経営資源が豊富でマネジメント力に優れた優秀な企業がトップシェアをとってしまいます。市場シェアが大きくない企業・後発企業の経営戦略は、市場をセグメントしてニッチ戦略を展開しニッチ市場で競争優位を作り出せというのがこれまでのセオリーです。また、市場の成熟やグローバル化とともに価格競争が激化し、W.C.キムR.モボルニュ氏らの「ブルー・オーシャン戦略」で言うレッド・オーシャンの市場と化してしまうことも多くあります。

因果関係を重視する経営理論で、有望な新たな市場機会はどの程度見つけ出すことができるのでしょうか?

P.コトラー氏の「マーケティングの10の大罪」で「新たな市場機会を見出せない」とされていましたが、日本マーケティング研究所(JMR)の故水口健次が「初期微動をとらえろ」とよく言っておりましたが、消費者調査からそれを実現する難しさを若かりし頃の私は実感していました。

「新しい市場の創造」の在り方をマーケターから経営コンサルに転職し、神戸の田舎で独立し経営の現場支援でまだ模索し続けていました。流通科学大学学長・日本マーケティング学会会長の石井淳蔵氏の「マーケティングを学ぶ」に、P(ポジショニング)を先行させる新しい市場の創造の事例があります。マーケ屋(マーケティングの外部実務家)としてP(ポジショニング)を先行させるには、ブルー・オーシャン戦略策定のフレームワークを2005年の初版本のころから活用しようとしてきました。「初期微動」は因果関係を証明できるものではありませんが、仮説的に「ブルー・オーシャン戦略」の一部「6つのパス」から「戦略キャンパス」を描いて新しい市場を創造する手掛かりを得るようになりました。

私は、1982年に日本マーケティング研究所(JMR)グループに入り、消費者調査で多変量解析し提案すること(木を見ると呼べばいいのでしょうか)もしましたが、競合企業調査・流通関与者調査などから事業戦略・計画へのご提案(森を見ると呼べばいいのでしょうか)をすることを多く経験いたしました。振り返ると、ブルー・オーシャン戦略の、市場の境界を引き直して競争を迂回し、ブルー・オーシャンを創造するための6種類のアプローチ「6つのパス」、①代替産業に学ぶ、②業界内の他の戦略グループから学ぶ、③別の買い手グループに目を付ける、④補完財や保管サービスを見渡す、⑤機能思考と感性思考を切り替える、⑥将来を見渡す、トレーニングをJMRで実務を通じて経験させていただきました。マーケティング・リサーチと言えば消費者調査&統計分析と思われがちですが、“ブルー・オーシャン戦略の戦略キャンパスを描く”ためのマーケティング・リサーチもあるのです。「ブルー・オーシャン戦略」では「6つのパス」は外部に任せず自分たちですべきだとしています。社内リサーチ部門またはプロジェクトで行うか、「利益相反しない信頼できるパートナー・リサーチ会社」に委託しなければなりません。大手法律事務所が社外取締役を引き受けない・抑制する理由が「利益相反取引の禁止」です。たとえば、A弁護士がX社の社外取締役になれば、X社の利益に尽くす義務が生じ、原則A弁護士はX社の属するY業界の競合会社Z社とは取引できないというものです。「6つのパス」をリサーチするにはクライアント企業の内部情報を基に詳細な理解をした上で行わねばなりません。私がいたころの日本マーケティング研究所(JMR)グループは、幾つかの会社に分かれていたのは「利益相反取引の禁止」を徹底していたからです。どこよりもクライアント企業のことを専門的に深く理解し、クライアント企業にとって結果が得られるまでトコトンお手伝いする「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」・・・・そんなマーケターは少なくなってしまいました。最近米国企業などで見かける肩書に”Business Development”があります、米国ではキチンとそういう人材を社内に置く企業も少なくないのです。

1988年転職し中堅中小企業様の経営コンサルティングに従事し、教育研修や経営計画策定などのコンサルティング業務に従事し、1996年神戸の田舎で独立し個人事務所としてコンサルティングを続けていました。2004年㈱MCプロジェクトを設立し、”Business Development”ができる「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」をもう一度目指しはじめました。”Business Development”ができる「利益相反しない信頼できるパートナー・マーケティング会社」ですから1業種1社のクライアントを順守し、経営の原則的な特定のクライアント企業からの売上総利益が1/3以上を占めないということは無視し過半を占めてもよい、どこよりもクライアント企業のことを専門的に深く理解しクライアント企業にとって結果が得られるまでトコトンお手伝いする、これらを当社のルールとしています。クライアント企業の利益のために働き、クライアント企業からオファーがなくなれば(取引停止、社員様なら解雇)現在の生活に窮する・・・・言わば、企業内でチャレンジする管理職の方々と同じようなポジションです。経営者の方と直接信頼関係が築ける機会がある外部専門家と言う部分では少し違いがあるかもしれませんが、企業の一定の地位にある管理職の方とそう変わりなく、クライアント企業の経営者・取締役ではありませんので、全社的な企業革新を推進する権限もありません。クライアント企業の”Business Development”のためには私もマーケティングだけでなく、現場の実務で使い貢献するためにBigData解析技術やITC技術も身に付けてきました。それらも一つの手段(Mean)としてクライアント企業にとって受容してもらえるリスクの範囲内で近い将来役に立つであろう新たなビジネスを開発する小さなクライアント企業内の社内ベンチャーを立ち上げようと㈱MCプロジェクトを設立しました。

自社商品を持っていると言ってもクライアント企業は、年商数億円~数百億円規模です。日本の99.7%を占める中小企業様です。意欲的な経営者の方が新しい市場の創造に取り組まれるのをマーケ屋(マーケティングの外部実務家)として実務参加しながら”Business Development”の推進をお手伝いしています。意欲的な経営者の方の直轄といえども数名のプロジェクトからスタートして行きます、小さな社内ベンチャーです。「ブルー・オーシャン戦略」でも「3章ブルー・オーシャン戦略を実行する」以降の章は企業革新に繋げていく内容になっています。小さな社内ベンチャーがどう育っていけばいいのか、2008年ごろまだ参考になる経営の専門書はなかなかありませんでした。2010年ごろから小さな社内ベンチャーの”Business Development”をお手伝いする機会を得ました。ここで、原書2009年S.D.サラスバシー氏の「EFFECTUATION」(2015年訳本出版)が役立ちました。

あるクライアント中小企業における社長直轄の数名の小さな社内ベンチャーによる「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のスタートでは、ブルー・オーシャンを創造するための6種類のアプローチ「6つのパス」から、現在の利害関係者と今何ができるか(手段:Means)を明らかにして、クライアント企業の経営者がどこまで損失を許容されどう実行して行ってもよいのかのコミットメントを得て、経営者にプロジェクトの進行状況等の報告・相談を月に1~2回必ず行い、確実に成果を積み上げるよう「EFFECTUATION」の熟達した起業家の行動論理を参考に実践支援していきました。社内ベンチャーのようなプロジェクトは当初各部署からの成果は初年度売上高1億円程度くらいの売上総利益でプロジェクトの固定費を賄える程度のものからスタートしました。社内だけでなく既存業界周辺の新しい市場の販売先パートナー候補にも認知されそこからオファーを得て、新たな取り組み課題にもチャレンジする機会を得ることができました。エフェクチュエーションでいう驚きの積み重ねですが、その度に「ブルー・オーシャンの6つのパス」を使いチャレンジできる実行可能な手段(means)等のアイデアを捻り出し、損失リスクが経営者の受容範囲かどうかのコミットメントを得て、実行し成果を積んで行きました。将来予測ではないが、「ブルー・オーシャンの6つのパス」の質的なマーケティング情報を集め、各段階で明確な優位ポイントを形成する実行可能な手段(means)を捻り出し、その優位ポイント形成の魅力と損失リスクに対するトップ・マネジメントのコミットメントを得るのがマーケティングを担当する者の役割でした。プロジェクトの初めから戦略と目標があったわけではなく、こうした積み重ねで数年かけ数十億円規模の事業部となりました。現在は、得られた「新しいビジネス・新たな経営資源」を社内共有し、全社シナジー効果をどう作り出しさらに企業成長していくかに取り組む「競争優位を築く」段階にあります。

「組織風土」「企業文化」も「人工物」であり、紡ぎだされるものだと私は考えています。

やろうとしていることの可能性を評価するのも、その可能性に対してどの程度の損失を許容するのかを提示しプロジェクトをコントロールするのはトップ・マネジメントです。手段(means)や利害関係者と相互協力・コミットメントし協業パートナーと市場を紡ぎ出そうとする企業内起業家がトップ・マネジメントにとって許容できるリスクの範囲でプロジェクトを起こすことから”Business Development”はスタートすると私は考えています。紡ぎだそうとする「市場や経営資源など」もその大きさは当初は分かりません、しかし経営者は、新しい市場の創造に取り組まなければなりません。場合によっては、既存事業を再成長または生き残らせることと同時並行に行う必要もあるでしょう。トップ・マネジメントの経営者・取締役は、プラグマティストのマーケターが「ブルー・オーシャンの6つのパス」から見つけた”Business Development”の小さな種を社内の小さなプロジェクトに蒔き、新しい「市場や経営資源」などを紡ぎだすまでエフェクチュエーションの論理を活用して育てて行くことで企業革新が少しずつ進行して行くと私は考えています。このエフェクチュエーションの”Business Development”プロセスを経て得られる新しいビジネス・新たな経営資源」を社内共有することによって新しい「組織風土」「企業文化」も作りだされて行くと私は考えています。

日本マーケティング学会会長・流通科学大学学長 石井 淳蔵 氏の2014年「寄り添う力」や学会でのサロンの講演でもこのように説いておられます。相手に共感する現場の実践がビジネスの知を生み、実践を重視するプラグマティズムのマーケティングを提唱されておられます。経営の研究者は後であれこれ論理を展開するけれども、重要なのは実践に当たり前はない。実践の価値を重視し、マーケティングでも業界発想や既存ルールに縛られず、いかに創造的な発想、創造的な適応を実現できるかであると語られています。顧客に寄り添うことで生まれる新しい価値やアイディア・取り組みを大切にし、顧客に寄り添う実践を通じて実践が理論を越える重要性を強調されています。プラグマティズムについては「寄り添う力」や「エフェクチュエーション」の書籍で理解を深めてください。私は”Business Development”の実践を支援するのを専門にする実務家で、参考にはしてはいますがここで説明できるほどの学術的見識はありません。

ただ、現場で重視しているのは「顧客」だけではなく、社内起業の投資家である「トップ・マネジメント」も同じように大切にしています。”Business Development”の小さな種を蒔こうとしているトップ・マネジメントが、「自社ビジネスの現状」と「どうありたいのか」とのギャップや課題認識・どこまでならやっていいと考えているのかなどをプロジェクトが理解することを重視しています。このようなプロジェクトだからこそ、トップ・マネジメントから種を蒔いても貰えるし、育つ環境を与えてももらえる。場合によっては、トップ・マネジメントが社内で成果を上げるようプロジェクトを援助する行動をとってもらえることすらあり得ます。社内起業の”Business Development”では、そのプロジェクトの進む先は予測可能なものではありません。普通にプロジェクトの活動計画を出しても、因果関係を重視するこれまでの経営理論(コーゼーション)による戦略と目標を求められ、それが出せないとスタートすらできません。”Business Development”のマーケティングで必要なことはまず、ブルー・オーシャン戦略の一部「6つのパス」から「戦略キャンパス」を描くのを活用し仮説的なものとして近い将来企業成長に役立つ「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のアイデアとそれる実現する今やれる手段を創造することです。そして次に、リスクを最小にして最大の成果を出す小さくても「新しいビジネス・新たな経営資源の開発」のポジショニングを明確にしてトップ・マネジメントとinteractionを図ることです。コンプライアンス(株主代表訴訟を含む)などトップ・マネジメントがリスクをとって新しい取り組みしにくい現代の日本の経営環境下、トップ・マネジメント決済でスタートできる(受容してもらえる小さな失敗の損失の範囲で始める)コミットメントを得るための社内マーケティング(インターナル・マーケティング)が”Business Development”で求められます。

 

エフェクチュエーションの和訳本は非常に高価です。また、本の内容も経営学の研究者向けの部分も非常に多く、実務家にとっては、4章・5章のあたりが重要な部分です。この部分だけ以下に簡単に抜粋いたします。

 

起業家は、多次元的な不確実性の下で、どのようにして合理的に」に振る舞うことができるかを明らかにした論理がエフェクチュエーションです。

このロジックは、

●非予測的:確率の事象空間を、既知で不変のものとして扱わないこと

●非目的論的:選好や目標を、所与で変更不可能なものとして扱わないこと

●非適応的:環境を外的なもの、または適合の対象として扱わないこと

を満たなければなりません。こうした論理は、「デザイン」の論理であり、「選択」の論理ではありません。(2009年S.D.サラスバシー エフェクツエーション 第4章 エフェクツエーションを理解する:問題空間と問題解決の原則 P129)

エフェクツエーションの最近の動学モデルは、下図のようなものです。The effectual cycle

Effectuation: Society for Effectual Action http://effectuation.org/ より

それぞれの要素についての説明は後にして、この動学モデルの中心となるのは、エフェクチュエーションに基づくコミットメントの発想であり、それは次のような特性をもつものです。

1.予測可能性ではなく、未来や外的環境のコントロール可能な側面を重視する。さらに、コントロール可能なものに転換できない予測可能な情報は避けられる。

2.それぞれのエフェクチュアルな行為者は、損失を許容できる範囲内でコミットする。目標利益や成果を達成するために必要だと予測されたものに対してコミットメントするのではない。

3.ネットワークの目的は、実際のコミットメントを行う人々によって、彼らの交渉によって決定される。予め決められた目的によって、誰が経営(ビジネスへの関与)に参加するのか決定される訳ではない。

4.ネットワークが拡大し、可能な「手段」が増加するに従って、「目的」はより多くの制約を受けることになる。

言い換えれば「人工物(市場)がどのようなものになるか」は、時間の経過とともに、関与者が欲するものが手に入ることが分かるに従って、次第に固まってくる。

5.このプロセスの鍵は、それが代替的な手段であれ目的であれ、代替的選択肢の中から選択することではなく、既存の現実を新しい代替案へと変容させることです。

(2009年S.D.サラスバシー エフェクツエーション 第5章 エフェクツエーションを理解する:エフェクチュアル・プロセスの動学 P144)

 

エフェクチュエーションの動学モデルを構成する、「デザイン」の論理であるエフェクチュエーションの5つの原則(行動のための基準)は次のようなものです

1.「手中の鳥」の原則:手段(MEANS)からスタートし新しい結果を創る。

「問題フレーム(the problem flame)は「特定の手段(実行可能な)を使って、可能な結果をデザインする」というものであり、モデルは「一から多の関係図」で構成され、エフェクチュエーションのプロセスは、スタート時のゴール(目的)にかかわらず1つ以上の結果を起業家が作り出すことを許容するものです。

新しい企業(事業)や市場を作る上で、「アイデンティティ(identity)」と「知識ベース(Knwledge bace)」と「社会的ネットワーク(social network)」が重要であり、これら3つの手段のカテゴリーから実行可能な手段から構成される新しい事業の最初の展開(起業家が何をするかを、ステークホルダー:利害関係者と相互作用すること)をスタートさせる。

※アイデンティティは、特定の結果に対する選好ではなく、特定へのプロセスへの選好・または生き方や決定の仕方に関する選好から構成されます。アイデンティティは架空のものでも本物でも・自由に選択されたものでも社会文化的に構成されたものでも・良いものでも悪いものでもあり得えます。

アイデンティティは、選好が存在しない時に、選好を構成するのに役立ちます。選好が未知である時に、小さく始める実験的取り組みを許容することができます。またそれは選好における変化が勝手に起こらないように、選好を上手く取り扱うことも可能にします。また、選好が「悪い」モノである場合に、アイデンティティは自分を律するためにどのような自制を行うべきか教えてくれます。

「アイデンティティ(私は誰であるか?)」は、「知識(何を知っているか?)」や「ネットワーク(誰を知っているか?)」に依存しており、それらによって変化する可能性があり、また逆も然りであり、それぞれ排他的でもなく独立したものではありません。これらを総体として、リソース(何を持っているか?)を規定しています。「何を持っているか(what I have)」と「どこにいるか(where I am)現在自分が置かれた状況」は、両方ともこれらの最重要な手段の派生型です。しかしこれらのあらゆる入手可能な手段が重要なのではなく、それらを使って起業家がなにをするかをステークホルダーと相互作用を開始することが重要なのです。

2.「許容可能な損失」の原則:Affordable Lossを判断基準にして意思決定する。

エフェクチュエーションは、その人(熟達した起業家)は、「いくらまでなら損していいか」を決めることから始めて、しかる後に、限られた手段(means)を梃子として創造的に活用することで、新たな目標となる新たな手段を作りだすことを重視します。起業家は、どこまでなら損失を許容できるかの推定に基づいて、どのようなベンチャーを興すのかを決定する。その上で経営に参画してくれるステークホルダー:利害関係者を集め、世の中で利用可能な余剰資源(リソース)を創造的に活用するために、ベンチャーを興すプロセスに取りかかる。エフェクチュエーションは、特定の新しいベンチャーを興すにあたり、許容可能な損失の原則を、自発的な関与者と彼らの持つ「新しい市場機会を具現化し、構築する能力」とを組み合わせ、それを新しいベンチャーを選択する上での判断基準とする。許容可能な損失の原則は、起業家自身が集められる手段の範囲で、アイデアを市場に持ち込むための創造的な方法を見つけ出すことを促す。許容可能な損失の原則を用いることは、エフェクチュエーションに基づく行為者に、地理的・社会文化的な近接性、社会的ネットワーク、専門的領域にかかわらず、身近な場所に関与者を見つけることを要求する。さらに、すでに理論化され認識されている「市場」や、そのアイデアについての戦略的領域に縛られない選択をすることによって、エフェクチュエーションに基づく行為者は、最終的にどの市場で事業を展開し、どのような新しい市場を創造するのか、について驚きに開かれている。

 

3.「クレージーキルト」の原則:利害関係者とInteraction Commitmentし協業し市場を紡ぎ出す。

エフェクチュエーションは、不確実性を減らして参入障壁を作るために、関与者の事前のコミットメントや相互協力を強調する。「クレージーキルトの原則」は、今後経営にかかわるか関わらないかもしれない潜在的な関与者について機会コストを考えるのではなく、実際にコミットをした関与者を考慮に入れるべきだとする。

主要な関与者からのコミットメントは、未来に対する特定の次元について契約することで不確実性を無効化し、そしてそのネットワークが成長するにつれ、未来はその契約で合意されたとおりに見えるようになる。エフェクチュアルな起業家は、まずビジョンを作り、それをターゲットとなる関与者に押し付けたり、“売り込んだり”するのではなく、関与者同士の動的な相互関係から、未来が融合されていく姿に対して取り組みを集中させる。

特定の市場にこだわらないことによって、関与者とのパートナーシップのパッチワークによるキルトが成長し、それは新しい市場に結実するか、最終的にどの特定市場で新しいベンチャーの事業が固まるかを決定するのである。

4.「レモネード」の原則:不測の事態もリソースとして捉え(Leverage Surprise)価値や利益に転換する。

「計画」「偶発性」「不確実性」の三者間の関係は、エフェクチュエーションの論理では、劇的に再編される。エフェクチュエーションに基づく行為者は、目標を緩やかにしか設定せずに始めることが多く、「計画」は徐々に作られ、不確実性や偶発的な情報は、目標を達成するための「リソース」として活用する。資源の獲得と選択を規定する要因としての「目標」に依存しない、ゆえに意思決定者は彼らが選択した結果の範囲内で、「経路依存性」を蓄積し有効活用するのである。つまり、「不確実性」は不利をもたらすものではなく、「リソース」であり、「プロセス」なのである。

エフェクチュエーションの論理では、驚きはむしろ価値創造のための機会の源泉であると考える。ただしそれが可能になるのは、新しい可能性を生み出すために、驚きを用具的なやり方でとらえ、さらに想像力に富んだやり方で、驚きと既存のインプットと組み合わせる時のみである。

5.「飛行機の中のパイロット」の原則:非予測的コントロールで新商品・新市場・新企業を創造する。

エフェクチュエーションは、「予想できない未来のなかのコントロール可能な側面」に焦点を合わせる。この論理的前提は、未来がコントロールできる範囲では予測は不要だ、というものだ。人間の行為が未来を形成する主たる要因である場合に「非予測的コントロール」の論理が有用である。

熟達した起業家は、何が合理的か、つまり何が「実行可能」で、なにが「実行に値する」かを経験を通じて確認する。言い換えれば、彼等は、まず行動に移せる仮説を立て、世界に対する行為や他者との相互作用を通じて、実際にそれを具体化する、あるいは書き換えるのである。

「Knightの不確実性」「目標の曖昧性」「環境の等方性」で特徴づけられる問題空間においては、エフェクチュアルな行為者は、「Knightの3つ目の壺」に対処する唯一の方法は、すでに手元にある身近なものを使って、ともかくやってみることだと主張する。

熟達した起業家の中には、自殺の第4象限(新市場・新製品)を好む傾向がある。もし市場が予測可能であればあるほど、もっと賢くより多くの資源を持つ別の誰かがそこを独占できてしまう。市場が本当にそこに予測できない場合こそ、小規模でスリムな、センスの良いスタートアップの起業家に、革新的で価値のあるものを作るチャンスが生まれる。いいかえれば「自殺の第4象限」においては、飛行機のパイロットが必要なのだ。

(2009年S.D.サラスバシー エフェクツエーション 第4章 エフェクツエーションを理解する:問題空間と問題解決の原則 P94~124)

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日本マーケティング学会のマーケティングサロン“Choi Labo”in KANSAI

2015年8月6日、日本マーケティング学会の第34回マーケティングサロン「“Choi Labo”in KANSAI ―明日は、ビジョンで拓かれる:―長期経営計画とマーケティング―」に大阪へ出かけてきました。気軽な会合ですが、私には良かった。春に本を買って読んで気になっていたところが、スッキリしました。

石井会長(流通科学大学学長)の短いお話では、ドラッカー氏の宗教の先生が「何をもって憶えられたいかね」を引用しながら、「ポジショニング」に展開し、揺るぎないポジショニングや自分の視点ではなく他者の評価も大切にすることによって「ビジョン」を形成して行くことが大切だと、19分という短い時間でのスピーチで述べられていました。
私は、「IDENTITY」と万年筆で手書きで自分のメモに書き留め納得していました。

栗木教授(神戸大学大学院経営学研究科教授)もさらに短い時間でお話しされました。
東京で経営ビジョンについて社会人大学院で勉強会をした時は、ミドルマネジメント層の方が多く、「経営ビジョンの大切さは分かるが、現場では大変なんですよ!」という反応。大阪で経営ビジョンについて社会人大学院で勉強会をした時は、中堅中小企業経営者の方が多く、「その通りだ!」という反応。
栗木教授は、経営トップでなくてもミドルマネジメントであっても「ビジョンを持って自分のビジネスに取り組む」ことが大切だと「リクルート」の「受験サプリ」の事例を紹介しながら話を結ばれました。
春に「明日は、ビジョンで拓かれる」の本を購入し何度か気になるところを読み返しながらその時こんなメモを書いていました。

経営ビジョンは経営者・経営陣しか作り得ないものなのか?
経営ビジョン策定は、トップマネジメントの関与を抜きに進められることは考えにくい。ボトムアップ型での経営ビジョン策定であっても、企業としての経営ビジョン策定は、経営者・経営陣のマネジメントによって行なわれるものであることは確かなことでしょう。

全ての経営者・経営陣が将来の企業成長をもたらすことができる経営ビジョンを策定できるか?
そうではないことを、「明日は、ビジョンで拓かれる」のケーススタディーが物語っています。
さらに、経営ビジョンは外部から招聘されたプロの経営者が策定し得るのかというと、同書第5章IBMのケースでそれは難しいとされています。
IBMのケースでも外部から招聘されたプロの経営者ルイス・ガースナー氏が企業経営を立て直し、生え抜きの人材からサミュエル・J・パルミサーノ氏を後継経営者に登用し、将来の成長に向けて経営ビジョン策定を託しています。パルミサーノ氏は、すでに社内にあったJAMがもたらす集合知の活用を、経営ビジョン策定のために応用しボトムアップ型の方法をとった。
経営の建て直しには、生え抜きよりも外部から招聘されたプロの経営者が適しているようです。これまでのシガラミがなく、合理性に基づく意思決定(causation:コーゼーション)するマネジメントを断行しやすいでしょう。ルイス・ガースナー氏は退任時に在任中学んだ最も重要なこととして「企業文化が経営の一つの側面ではなく、経営そのものであるということだ」と述べています。
第2章エーザイのケースで、「患者様と喜怒哀楽を共にする」ということの最大の成果として内藤晴夫社長は、「一人ひとりの社員が、予期せぬ事態や何らかの決断を求められる局面に対峙した時に、自らの価値観や判断基準に沿って自主的に意思決定し行動を起こせるようになってきたことだ」と述べられています。企業理念は経営TOPが策定するものの、hhc活動やチーフタレントオフィサーという人材力強化のための役職など、ボトムアップ型の企業文化を醸成する仕組みがある。
第4章のサントリー、「まあ、そう言わずに、やってみなはれ。」「やるだけのことはやりなはれ」市場のないところに市場をつくる企業文化。「利益三分主義」の社会貢献事業・・・・本にはないが1980年代前半カリフォルニア・ワインが今ほど有名ではない時代、ナッパのロバートモンダビのワインを日本で販売していたのはサントリーだったと記憶しています。サンフランシスコのホテルでデービット・A・アーカー氏にJMRの当時社長森茂樹・ラジオアソシエイツの柳沢健氏と共にお会いし、「カスタマー・リレーションシップ」についてのお話をしました。カスタマー・リレーションシップにおけるIDENTITYの重要性について学ばせていただいたという私の感想を話したことを覚えています。おそらくロバートモンダビへの訪問・ヒアリングはアーカー氏のコーディネートだったと記憶しています。企業文化の共通性があるワイナリーだったから、サントリーはロバートモンダビを扱われていたのでしょう、少なくとも私は当時そう考えていました。
企業文化という継承すべき行動様式のようなものをビジョンという形にCSR推進部が社長の命を受けて整理・策定したケースのように思います。世界戦略を担うプロの経営者といわれる方へのバトンタッチの準備だったのか?・・・・私はそう勘繰ってしまいます。しかしサントリー・ウェルネスを生み出したりするミドルマネジメント層のサントリーの企業文化は素晴らしいと私は今も思っています。

第2章エーザイのケース・・・・野中郁次郎氏の暗黙知の論理が内藤晴夫社長の心を捉えビジョンだけが先行していまひとつ実践につながらなかったときにある転換が起こった。顧客との喜怒哀楽を通じて得る知は、「その場でしか知りえない、その人でしか知りえない知」にほかならない。「そうした暗黙知を組織に持って帰り、組織の知、共同の知とするプロセスが大切だ」と説く野中の理論を受けhhc活動の転換を促した・・・・とあります。

デービット・A・アーカー氏は今もBURAND だけではなくビジネスのIDENTITYを重視しておられると私は考えています。30年近く前マーケティング会社を経営されていたアーカー氏とのお話でIDENTITYの重要性を学び、今の私はマーケ屋としてCORPORATE CULTURE のIDENTITY(断じてCIではない)を形成していくためにビジョンは重要だと考えています。
IDENTITYは、実際に行動していて顧客やステークホルダーがそれをどう認知しているかを知ることでブランドマネジメントのようにマネジメントできるものだと思います。
ビジョン策定が先か創造適応する行動が先かはケース・バイ・ケースでしょう。優秀な経営者が明日を切り拓くような魅力あるビジョンを提示し、行動を起こさせる仕掛けや仕組みを導入し、実際に行動に起こされていればマネジメントできるでしょう。
ビジョンが策定されてない中でも、創造適応する行動が企業の中で行われており行動様式が社内で認められていれば成文化されていないだけで、企業文化としてIDENTITYは形成されているでしょう、そして顧客やステークホルダーはそれを認知しているでしょう。ただマネジメントしているか?といえばマネジメントできていない。
リクルートの江副イズム「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」。顧客を含めステークホルダーとの関わりの中で自ら機会を作り出し、機会を活かせるようにするための行動を起こし自らを進化させよということ。
この江副イズムの考えを記したものが今もリクルートのミドルマネジメント層の机の中にあります。中途採用でリクルート出身者を採用したいと高い人気があるのもこの江副イズムによるところも大きいようです。リクルートで担当するビジネスを「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」といっているだけでなく、成長したら独立を奨励するリクルートの江副イズムです。ビジョン持ってエフェクチュエーションにあるような何度も企業を成功する経営者の行動様式に似た行動を彼らはしています。

市場の初期微動は、現場で関わるステークホルダーの変化を意識して捉えようとしなければ発見できないものです。初期微動から自ら機会を作り出し、機会を捉えるべく自らを変えチャレンジ行動を起こし、社内でビジネスユニットとして認められることができれば、そんな人たちが輩出されその暗黙知が組織共有されていけば、企業文化としてIDENTITYは形成されるのではないでしょうか。

私のIDENTITYは古いJMR流のマーケ屋です、「お客様のよい結果が得られるまでお手伝いする!」。リサーチ・分析・提案だけではだめ、商品開発もチャネル開発もプロモーションも現場で実務支援できるよう様々なスキルにも挑戦してメゲズニお手伝いしきる。還暦も近づく老体・老眼に鞭打ってマーケ屋に精進するのは、経営やマーケティングやIT・ICTの新しい手法を学んで現場で活かしてみてちょっとでも成果が出てくると面白い!から。

以上がその時のメモのコピペです。
マーケティング学会も大阪や地方都市の会員が少なく、大変そうです。
経営やマーケティングなどの研究会、古巣のJMRの戦略ケース研究会も大阪は無くなりました。大企業はほとんど東京本社、経営やマーケティングに関心のある人の密度が違う!
年会費一万円、ドラッカー氏も次のように言っています。
自己啓発に最大の責任を持つのは、本人であって上司ではない。
自らの成長のために最も優先すべきは、卓越性の追求である。
能力は、仕事の質を変えるだけでなく、人間そのものを変えるがゆえに、重大な意味を持つ。
しかも、仕事が心を躍らせるのは、仕事を通じて自己刷新がはかられるときである。
その自己刷新の王道が、予期せぬ成功の追求である。
お仲間が増えると嬉しいです。
大学の先生や研究者の方が多く、寂しくしています。

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社内ベンチャー起業家育成にエフェクチュエーションを応用

エフェクチュエーションは、複数回起業し成功させた起業の専門家に共通する行動特徴を抽出し、後にThe effectual cycleとしてまとめられたものです。

経営学やマーケティング学の常識である、経営理念(コンセプト)⇒経営目標(ミッション)⇒経営戦略⇒経営計画のプロセスにおいて、新事業開発をしようとするアプローチではありません。

経営学では、過去の研究結果からも新商品・新市場の象限に位置づけられる新規事業は成功確率が非常に低い領域とされています。だから、シナジー効果のある領域に戦略的に技術・市場の研究をし、合理性のあるエビデンスに基づいて作成された経営戦略・経営計画によって着手するかどうかを経営意思決定されるのが一般的です。

経営的には効率よく新規事業を立ち上げるために、有望そうな新商品・新市場の事業領域は、M&Aで取り組まれるケースも少なくありません。

これらとは違った社内ベンチャーの起業家を育成するフレームを提供しているのが「エフェクチュエーション」だと私は捉えています。

The effectual cycle

 

エフェクチュエーションは、新商品・新市場の新会社(ビジネスユニット)を起業するに当たってPilot-in-the-Plane (Control vs. Predict)予測よりコントロールを重視しています。専門家の起業家は、起業しようというとき合理性のある十分なエビデンスに基づいて作成された経営戦略・経営計画を作成して着手するのではありません。

予測よりもコントロールを重視するとは、自ら情報収集の行動をしビジネス仮説シナリオを立て、利害関係者と交流し協力を得て、その中から初期のキー・パートナーを見つけ出しリスクも含め自分がリードしてやっていけると確信できるなら実行するということだと、私は考えています。

 

ビジネス仮説シナリオを立てられるだけの質的情報(専門家や利害関係者へ自らデプス・インタビューすることを含め)と変化の初期微動を捉えるキー指標から、新事業の構築に着手したとき、私は誰(ポジショニング)・私が知っていること(オペレーション)・私が知っている人(実現するための協力者)から実行可能な手段(MEANS)を起点に、可能性を探ります。

そして、リスクを最小限にした活動から得られるリターンを目標とするのではなく、許容できる損失の大きさによってリスクの限度を定め、そのリスクの範囲内で起こり得る高い方の目標とアクションを選択する。(Affordable Loss)

「悪い」ニュースやサプライズに出くわしても、むしろそれは新たな市場を作り出す潜在的機会をもたらすと解釈し、その代わりに最悪の事態に対処するための「仮説」シナリオを作る。(Lemonade (Leverage Contingencies)

利害関係者に自ら交流し、その中からビジネス仮説シナリオに興味を持ってくれた(相互作用しあえる)参加者を自ら選んで事前に約束をとりつけ不確実性を減らし、ベンチャー初期のパートナーとして新たな市場を共同開発する。(Crazy Quilt:Partnerships)

ベンチャー初期のビジネス仮説シナリオを実行していくと、そこでまた新たな利害関係者との交流が生まれ新たなパートナーができ、新たな実行可能な手段と目標が見つかります。

このようなThe effectual cycleを経て一定の事業規模になると経営学でいうところのビジネスユニットの段階に成長したといえるでしょう。

そのビジネスユニットを通して、経営理念(コンセプト)⇒経営目標(ミッション)⇒経営戦略⇒経営計画プロセスのマネジメントをしなければなりません。プロの経営者候補としての育成段階に移行します。

「The effectual cycle」で新事業開発・事業革新にチャレンジする機会を与え社内起業させることが継続的な企業の活性化にはさらに重要なことだと考えています。社内起業の経験から創造的適応力のある人材・組織が育成され、その人たちに経営を教えCEOになってもらい、継続的な企業の活性化ができるのではないかと考えています。

株式会社MCプロジェクト 代表取締役 坊池敏哉

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