マーケティングが経営意思決定(Administrative Decision making)に寄与するには、顧客(Customer)だけではなく、消費者(Consumer)の消費心理を理解することも大切です。
既存事業の競争優位を高めるためには顧客(Customer)が重要です。バリュー・プロフィット・チェーンや顧客生涯価値(LTV)やカスタマー・バリューなどのマーケティングの手法(マネジメント・フォーマーット)等も顧客(Customer)ベースです。
日本でも1980年代から成熟市場・近い将来の人口減少による市場縮小などの市場環境変化にどう対応していくか課題は認識されていました。競争から共創という概念もすでにこのころからありました。新商品・新市場を切り開いていくマーケティングの新しいパラダイムにシフトして行こうということだったと思います。消費者(Consumer)の初期微動を捕らえ、新しい需要を共に育んでいこうということだったようにも思います。
そうした流れから1990年ごろ「生活者」という概念がマーケティングの世界に持ち込まれました。しかし、それよりずっと以前(1940年代ごろ)から社会学で「生活者」とは、「個人として自立し、会社人間から解放され、性役割固定観念にとらわれず、地球環境問題やリサイクルにも取り組み、地域活動・ヴォランティア活動にも熱心な存在のひとびと」とされるような意味で使われていました。
消費者(Consumer)と顧客(Customer)の消費心理を理解するには、商品やサービスなどの提供する側の観点からマーケティングのサーチ(Search:探索)・リサーチ(Research:調査・研究)をするのではなく、消費者(Consumer)と顧客(Customer)の生活行動や価値観・購買行動のキッカケ・動機などについてサーチ(Search:探索)・リサーチ(Research:調査・研究)すべきですよ、という意味での「生活研究」であればよかったのですが。
広告販促系のマーケティングの領域で消費者ではなく「生活者」としてとらえ生活研究しトレンド解説のようなことが流行しました。SPSSなどPC統計処理ソフトが普及し、主成分分析・因子分析・クラスター分析などが簡単にできるようになったという背景もあってのことです。M・E・ポーターの競争優位の戦略が1980年代半ばに浸透し始めたのと、マーケティングのSTP分析の市場セグメンテーションしターゲットを設定し、商品競争戦略の差別性の訴求に重点を置いたようなポジショニングをする部分が多かったように思います。
2000年代中ごろには米国を中心に、バリュー・プロフィット・チェーンや顧客生涯価値(LTV)やPCR分析(主成分回帰分析)からのカスタマー・バリューなどが登場し、効果の高い顧客マーケティング展開をするマーケティング・マネジメント・フォーマットが流行りました。
2010年代からはECコマースの隆盛・人工知能の導入などにより、Netショッピングでの購買行動・購買履歴データやソーシャルメディア発信情報などと合わせて、さらに効率的・効果的なECマーケティング展開するフォーマットが隆盛しています。
「エフェクチュエーション」(加護野忠男監訳、高瀬進・吉田萬梨訳)を発表した、ハーバート・サイモンの最後の愛弟子のサラス・サラスバシー教授の言うコーゼーション(Causation):原因・因果関係の分析(機械学習・ニューラルネットワーク学習を含む)による予測可能なシミュレーションによる競争レベルでのAdministration が中心になっているといえるでしょう。
非常に古い水口健次(1980年代に私が大卒入社した日本マーケティング研究所の会長)のマーケティングのAMTULから消費者(Consumer)と顧客(Customer)をマーケティングの実務にかかわってきた者としての私見として分類してみます。
1)潜在客(Latent Consumer):ニーズをまだ知覚していない消費者
2)見込客(Potential Consumer):ニーズを知覚している消費者
3)試用客(Trial Customer)
4)愛顧客・固定客(Loyal Customer)
5)推奨客(Advocacy Customer)
コーゼーション(Causation):原因・因果関係の明確に分析(機械学習・ニューラルネットワーク学習を含む)でき予測可能なシミュレーションにもとづくAdministrationは、顧客(Customer)が対象の中心となります。
日本マーケティング研究所では幹部には神大経営学部の教授の勉強会があり、入社1~2年目のペイペイの私は参加できませんでした。かわりに社内勉強会が週1回夜2時間ほど開催されるようになり、課題専門書を事前学習し議論する場が設けられました。その中で加護野教授の多角化戦略の新商品・新市場分野の成功率の低さについての論文に触れました。1990年代は成熟市場でありかつ高齢化・人口減少に突入する時代のマーケティングや経営に「新商品・新市場分野」への進出がカギなのにどうしたらいいのか関心を持たせてもらいました。
1970年代後半から1980年代初めのころ、私は大学で産業心理学を専攻し「消費心理学」というものを履修して初めて知りました、「統計心理学」というのもあり多変量解析を初期のパソコンで行うようなものも履修し初めて知りました。私は別の教授の産業カウンセリングのゼミに入りましたが、就職活動の最終盤の年末に日本マーケティング研究所の募集が目に留まり受けることにしました。消費心理学の教授の経歴を調べると日本マーケティング研究所に在籍しておられた時期があり教授に相談もして、就職することに決めました。
仕事で顧客(Consumer)の購買行動・購買心理を因子分析・クラスター分析などによって分析し新事業のマーケティング展開提案などをさせてもらい、一定のクライアント評価を得られました。そのご褒美か、日本マーケティング研究所時代3年目に(チーフ・ディレクターになる直前)、米国研修に出してもらい当時関係のあったデービッド・A. アーカーさん(後にブランド戦略論の有名な研究者になられた)とサンフランシスコでお会いし3時間ほどお話ししました。Consumer とのRelationshipについてお話ししました。顧客(Customer)とのRelationshipで競争(Competition)に勝つより、これから関係作りをする新しい消費者(Consumer)層と共創(Co-creation)することの重要性について若造のマーケ屋の私が米国のケース研究で感じたことを話しました。アーカーさんはいろいろとアドバイスや激励をしてくださいました。ちょうどアーカーさんが「サンタナ」にかかわっておられたころでしょう。
1980年代半ば日本マーケティング研究所が当時の日本のマーケティングの大学研究者の方と「共創」をテーマにした本を出したりしていました。まだ中間管理職なりたての20代半ばの私は執筆参加していませんし、その技量はありませんでした。発刊後読んでも、私には腑に落ちずにいました。
1990年代後半に、デービッド・A・アーカーさん(教授)が著書を出され世界的にブランド戦略の有名な方になられました。新しい消費者(Consumer)層とともに「ブランド」というマーケティング資産を作る、そのためにはブランド・アイデンティティとポジショニングの重要性を述べられていました。1985年ごろサンフランシスコでお会いした時、新しい消費者(Consumer)層との共創とIdentity(存在証明・存在理由・存在価値など)についてお話したこともあり、なんとなく書籍の行間のニュアンスも汲み取り理解できましたが、どうやったらいいのかというところまでイメージしきれていませんでした。
2000年代後半にハーバート・サイモンの最後の愛弟子のサラス・サラスバシー教授の「エフェクチュエーション」原書に出会いました(ずっと後に加護野忠男監訳、高瀬進・吉田萬梨訳の日本語翻訳書がでました)。2009年当時ペーパーバックの原書を持ち帰り1年がかりで主要な部分を読んで必死で理解しようとしました。
2010年ごろから「エフェクチュエーション」の論理をベースに、潜在客・見込客・試用客層を狙ったクライアント企業の新事業展開をサポートしてきました。
マーケティング実務やサーチ力(デプス・インタビュー等)や統計解析力はそれなりに身に着けていましたが、50代になってからNetやIT系の技術習得を独学でしました。サイトの開設(htmlやCSSとしてSEOやKW設定などを含む当時の競争のカギになる技術)や商品データベース整備、新しいターゲット利害関係者のリスト化のスクレイピングやNet営業の仕組みづくりや実践は、2010年ごろには実践していました。2016年ごろから人工知能の機械学習やニューラルネットワーク学習もPythonでトライもしました、作った人工知能のレベルは低いものに終わっていますが。
私にとって2010年以降は検索力(ググル力)やスクレイピング力があれば、「潜在客や見込客へのサーチが非常にやりやすくなった」こと、「信頼できる専門情報が非常に得やすくなった」こと、「安価な費用で情報発信できるようになった」ことが幸運でした。
上手く行かないことや失敗も多かったですが、2010年代は潜在客(Latent Consumer)・BtoC事業者、見込客(Potential Consumer)・BtoC事業者、試用客(Trial Customer)・BtoC事業者、に容易に安価にアプローチができる時代になっていました。
これまで私は1業種1社で利益相反しない形でクライアント企業のBizDevに取り組んできました。新市場・新製品の領域の潜在客(Latent Consumer)・見込客(Potential Consumer)や、BtoB利害関係者、技術分野の対象をネット活用し探し出す。そして、探し出したConsumerに直接訪問してデプスインタビューや文化人類学的なフィールド調査をします。そこからどんなConsumerがどのようなシーンでどんなニーズがあるのかどんな接点で購買活動が行われそうか、どの程度そんなConsumerが居そうか・増える可能性はあるのかなどをナラティブな仮説に整理します。経営トップに許容してもらえる損失の範囲で、人員や試作品やサービス方法など含めた小さなスタートアップ・ビジネス(具体的な小さなビジネスプロジェクト)を用意し、今の利害関係者や探し出した新たな利害関係者にあたりコミットしてくれる仲間(クレージーキルトの原則のパートナー利害関係者にあたる)を発掘していきます。体制も最低限で投資も小さく済ませるのにICT・ITは重要なファクターになります。
私のここ10年ほどのあいだのクライアントは上場企業ではなく、年商数百億円から千億円超程度の成長し続けようとされているオーナー企業と長くお付き合いさせていただいています。多くのクライアント様のお手伝いをしたなかでそういったところとの関係に収斂してしまった、ということかもしれません。また上場企業ではなくオーナー経営者のAdministrationだから上記のような取り組みをさせて頂けたという部分も多いでしょう。
私は日本マーケティング学会に所属させてもらい、「社会心理学講義」の著者パリ第8大学心理学部准教授の小坂井敏晶氏とリサプロでお会いできたのと、ハーバート・サイモンの最後の愛弟子のサラス・サラスバシー教授の「エフェクチュエーション」の日本語訳をされた学会所属の加護野忠男教授・高瀬進特定助教・吉田萬梨准教授や栗木契教授とお会いできたことに感謝しています。
日本マーケティング学会の会員ではありませんが早大ビジネススクールの入山章栄教授の噂を学会で聞いており「世界標準の経営理論」に触れ、ビジネスの現場で活動するマーケ屋・BizDevの私に思考の軸を提供して頂いています。
「世界標準の経営理論」では、第2部マクロ心理学ディシプリンの経営理論でカーネーギー学派の行動理論(BTF)等で詳しく重要な理論として位置づけられています。第3部ミクロ心理学ディシプリンの経営理論では、消費者・顧客の心理については全くありません。・・・・批判ではなく世界的な経営理論の中では消費者・顧客の社会心理学・認知心理学等は門外分野なのだと分かり、ビジネスの現場で活動するマーケ屋・BizDevの私のMyーplace(居場所)を自己認識することができました。
パリ第8大学心理学部准教授小坂井敏晶の著書等から、社会・市場・組織・コミュニティーなどのなかで、少数派として自分や利害関係者のPurpose(存在意義・存在価値)をUpdate(不具合の修正や小規模の機能追加)しながら、Myーplace(居場所)をRebuilding(再構築)し続けるように心がける気づきを得ました。
1980年ごろ加護野教授の多角化戦略の新商品・新市場分野の成功率の低さについての論文に触れ、市場縮小する日本のマーケティングや経営に「新商品・新市場分野」への進出がカギなのにどうしたらいいのか分からずにいました。1980年代半ばサンフランシスコでデービッド・A. アーカーさんに、これから関係作りをする新しい消費者(Consumer)層と共創(Co-creation)することの重要性についてお話しさせていただきながら、私はなかなか取り組むことができませんでした。ブランド戦略論の関連も学習しましたが、踏み出せずにいました。
ここ10年ちょっとの期間でICT・IT・AIなど経営環境が激変しました。
「世界標準の経営理論」の第4部社会学ディシプリンの経営理論に今私は関心があります。この10年自分で取り組んできたことを振り返り、これまで自分の知識不足・力量不足でできていなかったこと、ICT・IT・AIなどの経営環境の激変でこれからの世の中でできそうなことを考えました。エンベデッドネス理論・「弱いつながりの強さ」理論・ストラクチャル・ホール理論などから、ICT・IT・AIなどをツールとして活用し、新市場・新製品の領域の潜在客(Latent Consumer)・見込客(Potential Consumer)の初期微動をより新しい方法で捕らえることができるのではないかと今考えています。
ICT・IT・AIなどを活用しコーゼーション(Causation)で、試用客(Trial Customer)・愛顧客・固定客(Loyal Customer)・推奨客(Advocacy Customer)に対する「競争戦略」で勝ち抜くことも大切でしょう。すでに大手プラットフォーマーや先行Eコマース企業で勝負がつき始めるほど進んできています。
「世界標準の経営理論」の第4部社会学ディシプリンの経営理論のレッドクイーン理論のところで入山章栄教授は、『まだチェンバレン型競争に踏みとどまれる企業なら、そこではライバルのベンチマークによる切磋琢磨はやはり重要なはずだ。しかし、これからの時代は、多くの業界でさらに環境変化が激化し、シュンペーター型に移っていく可能性が高い。そして逆説的だが、環境が大きく変化するほど、企業の目的は「競争」になってはならないのだ。
この意味で、新レッドクイーン理論は「鏡の国のアリス」の赤い女王をはるかに超えた視点を提供する。アリスは、相手より2倍速く走ることを目的にすべきではない。アリスは、空を飛ぶことを考えるべきなのだ。』と締めくくっておられます。
新しい消費者層との市場共創(Effectual Market Co-Creation With New- Consumer)の私なりのやり方は、以下のようなものかなと思っています。
サラス・サラスバシー教授の「エフェクチュエーション」(実効論)では、
●自分が誰であるのか?(who they are?)特質、能力、属性
●何を知っているのか?(who they know?)教育、専門性、経験
●誰を知っているのか?(whom they know?)」社会的ネットワーク
これらを資源に、外部環境を新しい未来へと作り変えるための有用なデザイン論理としての行動のための基準5つの原則を提供しています。
エンベデッドネス理論・「弱いつながりの強さ」理論・ストラクチャル・ホール理論を応用しICT・IT・AIなどを活用し分析抽出すれば、新市場・新製品の領域の潜在客(Latent Consumer)・見込客(Potential Consumer)の初期微動をより確実に捕らえるようにする(私にはこれまでできていなかったところです、これからトライするにはスキルも気力も不足しています)。そして「エフェクチュエーション」を活用して探し出したConsumerに直接訪問してデプスインタビューや文化人類学的なフィールド調査をする。そこからどんなConsumerがどのようなシーンでどんなニーズがあるのかどんな接点で購買活動が行われそうか、どの程度そんなConsumerが居そうか・増える可能性はあるのかなどをナラティブな仮説に整理する。許容してもらえる損失の範囲で、ICT・IT・AIを活用し人員や試作品やサービス方法など含めた小さなスタートアップ・ビジネス(具体的な小さなビジネスプロジェクト)を用意し、探し出した新たな利害関係者にあたりコミットしてくれる仲間(クレージーキルトの原則のパートナー利害関係者)を発掘し協働する。
3月下旬に法人解散の決了登記や確定申告・納税を終えました。これも経験ですから全て自分でやりました、と言っても債務超過ではなく裁判所が絡むものではありませんのでたいしたことではないですが。40年間マーケティングや中小企業向け経営コンサルやBizDevに携わってきた市井の実務家の経験の振り返りとして備忘録にまとめてみました。
昨年末に個人成りしたのと、一昨年春ガンを患い郭清も上手く行き5年生存率も非常に高い状態ですが、本年3月に63歳になるのもあって比較的規模の大きなクライアント企業様だけ継続することにし整理しました。
この先、エンベデッドネス理論・「弱いつながりの強さ」理論・ストラクチャル・ホール理論を応用しICT・IT・AIなどを活用し実践する環境は脆弱ですし、機会も少ないものと思われます。
神戸の西区の田園地帯の生まれで、20年前にuターンしています。地域のお世話役もしており、地域の農地維持をする施策に取り組んだりもしています。
自然栽培で2~3haの米作で新規就農者の人が農業で生計を立てられるようにする取り組みを始めています。日本の農政の状態では、稲作では1ha当たり売上高(JA出荷買取額)100万円・経費等を引けば50万円程度の収入しかありません。1haあたり300~350万円の売上高にしようとしています。2年ほどのサーチ期間を経て、本年はその初年度です。米の新市場・新製品分野への取組・・・・無報酬ですが私にとって最後の小さなBizDevの新たな現場です。少数派として自分や利害関係者のPurpose(存在意義・存在価値)をUpdate(不具合の修正や小規模の機能追加)しながら、Myーplace(居場所)をRebuilding(再構築)し続ける、その一環での活動です。
これは、規模や内容が矮小なものかもしれませんしマネジメントと言うレベルではないかもしれませんがビジネスとしてやっていませんので、秘密保持条項はありませんので自由に備忘録として書けるでしょう。農業を取り巻く法律や行政や系統ルートなどの既得権益者など面倒なことも多いですが、これまでの経験を活かして新しい消費者層との市場共創のお手伝いができるので、私の老後の楽しみになるかもしれません。
MCプロジェクト 代表 坊池敏哉